直感は緩急から生まれる

社会心理学者の八木龍平です。今回のテーマは「直感は緩急から生まれる」です。直感力をつけたい方のために、直感力が開花する習慣についてお伝えします。

「スマホにも触らないでボーッとしている３分間を１日に何回かつくること」精神科医の西多昌規さん著『ぼんやり脳！』の指摘です。脳科学の視点から、余裕を持つこと、頭を空っぽにすることは有用だというのです。
なぜなら脳は、あれこれ頭を使っているときより、ぼんやりしているときのほうがフル回転し、情報を整理してくれるから。無心になる時間をつくることで、良いアイデアが生まれたり、考えがまとまったりするのです。

アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏は、日常的に「何もしないで休む時間」をつくっていました。ジョブズ氏曰く、そうすることで、「直感が花開く」「捉えにくいものの声が聞こえるようになる」というのです。
ジョブズ氏にとって「休むとは、発見や創造の手段」だったわけですね。
サッカー日本代表キャプテンとして長年活躍した長谷部誠選手も、著書『心を整える。勝利をたぐり寄せるための５６の習慣』で、「毎日３０分間、心を鎮める時間をとる」習慣を紹介しています。どんなに忙しい時でも、アロマを焚いて横になり、リラックスした状態で天井をじっと見つめ、ぼんやりする。そうすることで、自分と対話し、ざわざわした心を鎮めるというのです。
活躍している人は経験的に知っています。意図的にボーッとすることで、直感がはたらき、良いアイデアや解決策が浮かぶようになることを。意図的にボーッとすることをかっこよく表現した言葉がマインドフルネスや瞑想です。

私自身ボーッとすることは得意分野。ただ木を見ているだけで、退屈しません。（なまけているだけとツッコまれそうですが！）
瞑想の習慣も、かれこれ１５年以上続いています。私がよくやるのは合掌瞑想という、手のひらをつかった瞑想です。あぐらをかいて目をつむり、「いただきます」のように軽く手を合わせて、座り続けます。シンプルにただこれだけで、あとは座りたいだけ座ります。そうすると、体内が微妙に変化します。体内のバランスが整っていく感じがし、感覚がより鋭敏になって遠くの音が聞こえるようになります。この変化を体感すると、瞑想が続くモチベーションになります。瞑想はシンプルなもの。長谷部選手のように寝転んで天井を見続けるのも瞑想です。

ただ活発な性質の方だと、何もしないで休む、ただぼんやりするのがなかなか難しい。退屈だし、長続きしないでしょう。そういう方は、「強制的にリラックス」すべく、新鮮でゲーム性のあるマイルドな刺激を与えてはどうでしょうか。
そこでおすすめの３つが「歩く」「温泉」「神社参拝」です。

まず歩くことですが、定期的な運動は、記憶力と学習能力を高めます。汗をかくと気持ちいいし、運動に夢中になると、無心に近づき集中力が高まります。ただ、運動と聞くとハードルが高い人もいますよね。そこで「歩く」ことをおすすめします、歩き方にひと工夫します。
「歩きながら瞑想」するのです。

「歩き瞑想」のやり方はカンタン。歩きながら、足が地面に着いた、足が地面に離れたという感覚に集中します。あ、左足が地面から離れたな、左足が地面に着いたな、右足が地面から離れたな、右足が地面に着いたなと、これを繰り返します。言葉を口に出す必要はありません。自分の中で確認しながら、歩きます。
普段なにげなくやっていることを意識してやるのも瞑想の基本です。自分を客観的にながめる習慣がつきます。そうすると、悩みや苦しみも客観的にながめられるようになり、意識に余白や余裕が生まれます。

ふたつめは温泉です。夏目漱石の道後温泉、川端康成の湯ヶ島温泉、泉鏡花の辰口温泉、宮沢賢治の大沢温泉など、日本文学の代表的な作品の多くは、温泉宿で生まれています。
温泉につかると、強制的に何も考えられなくなりませんか。川端康成は大学を出てから３〜４年は持病の湯治をかねて温泉旅館に半年あるいは１年以上滞在したとか。創作する直感力も大いに高まったでしょう。
温泉まで行かなくとも、お風呂に入ってる時は、ほっとゆるむ、ひらめきタイム。引きこもりがちな人は、お風呂を温泉のように楽しんでください。

３つ目のおすすめは神社参拝です。神社参拝は、参道を歩くときは歩き瞑想、拝殿前で祈るときは合掌瞑想をしているようなものです。森や川など自然体験もできるので、神社に行くと「気持ちいい」「リラックスする」という人は多いでしょう。日本では歴史上の人物の多くが神社参拝を大事にしてきました。

現代人の脳は忙しすぎです。スマホがあると、起きている間はずっと忙しい人もいるでしょう。それでは直感の入ってくるスキマが無い。忙しい方ほど意図的にボーッとする時間をつくって、頭を整理整頓し、直感が降りてくる余裕をつくってはどうでしょうか。忙しい人こそ、ゆるむ時間をつくって緩急をつけると、直感力が高まり、メンタルも安定しますよ。