感情美人への道Vol.36 ~将来を見通そうとしてはいけない〜 Don’t try to forecast your future or you’ll never get started

行き先を完全に見通そうとするのは、巡って来たチャンスをフイにする確立がとても大きい、という事を覚えておいて損はないと思います。

 

何か選択を迷った時は、色々な情報を集めて「Aの道を行ったらこういう結果」「Bの道を行ったらこういう結果」という風に、色々な可能性を考えます。
そして誰でも「よし! この道を行ったら100%安全だ」と確信してから最初の一歩を踏み出したいですよね。

株式市場にも、こんな言葉があります。『落ちるナイフを掴んではいけない』
『落ちるナイフ=下落トレンドの真っ最中』という意味です。

落ちているナイフを途中で掴もうとすると柄ではなく刃を掴んで怪我するので、ちゃんと床に刺さってから(=市場が底を打ってから=上昇トレンドに変化してから)掴みなさい、という教えです。

これって本当なのでしょうか。

 

人生でも、リスクを限りなくゼロにしてから道を歩き出した方が良いのでしょうか

私は投資を二十年近く続けています。
だから、あえてこの言葉は間違いだと言いたいですね。つまり先が完全に見えてから行動するのでは、チャンスを逸するのです(特に個人は)。

例えやすいように、もう少し最近の相場の話をします。
原油価格の暴落や、中国の景気減速で年明けから日経平均はたった3週間で2500円も下落しました。

私個人の話をすると、これは昨年八月の暴落時に非常に似た形だったので、17000になった時点で一時底を打って反転すると判断し、定点観測している株をいくつか購入してみました。でも、全然底じゃなかったんですよね(汗)。そこから日経は、更に1000円落ちました。

デイトレーダーの人達は、ある程度損失が出た時点で「損切り」するのですが私は基本月〜年単位のスタンスなので損失が出ても少し様子を見る事にしました。
すると、突然の日銀「マイナス金利」発表(個人的にこれがいいか悪いかは微妙と思いますが)。そこから一気に為替と株価は反転したのです。

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この時、『底を完全に見極めてから買おう』『完全に上昇トレンドになってから買おう』としていた人達はこういう心理が働きます。
「あの時(=底)からこんなに高くなってるから、今更買うのは損する気がする。また落ちた時に買おう」それで、チャンスを逃してしまうパターンが多いです。

でも、今原油相場や世界中の株式相場を動かしているのは、人工知能を駆使したヘッジファンド。彼らが欲しいのは『ボラティリティ(変動率)』。つまり、急激な動きが大好きなのです。
なので、トレンド転換すると、あっという間に値上がりしたり値下がりしたりするので、個人投資家はオロオロする間に波に乗り遅れます。

 

これは、投資だけでなくて、人生のあらゆる決断に言えると思います

「この道が安全か、完全にゴールまで見通せてから動こう」と思っている人は、いつまでたっても一歩を踏み出せません。大体、ゴールが10km先にあるとしたら、目先500m位見通せたら、スタートした方がいいですね。

なぜなら、将来なんてどんな人でも予測が不可能だからです。政治情勢や世界各国の経済事情の予測をする場合、超一流の専門家と、ズブの素人が勝手に予測するのとどっちが当たるか分かりますか? 実は、当たる確立はほぼ同じなのです。

例えば、先週の週刊誌の見出しはこんな感じになっていました。

週刊ポスト
『わずか半年で株価2万3000円大反騰!
三菱UFJ国際投信が出した衝撃レポート!』

週刊現代
『激震! 株価1万4000円割れへ!
日銀内部資料を入手!』

この見出しがちょうど新聞の見開きページに載っていました。どちらも専門家が徹底的に分析しているのに、見事なまでに逆の分析結果です。
色々な状況を鑑みて、情報を分析した結果がこれです。プロが予測する結果でさえ、目隠ししてどちらにダーツの矢が刺さるのか、という確立と同じレベルという事になります。

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なぜ専門家の予測が当たらないのか? それはノーベル経済学賞受賞者でもあるダニエル・カーネマン教授の言葉を借りると「複雑な情報をとりまとめて判断しようとすると、人間は救いようもなく一貫性を欠く」からです。
行き先を完全に見通そうとするのは、巡って来たチャンスをフイにする確立がとても大きい、という事を覚えておいて損はないと思います。

「危険がなくなったら動く」というよりも、「リスクが許容できると思った時点で動く」というスタンスで決断して行くと、あなたの成長スピードは二乗にも三乗にも加速していく事でしょう。

 

参照:『ファスト&スロー(上)』早川書房 ダニエル・カーネマン

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