Fly Against the Wind
世界で初めて”有人飛行”実験に成功したのは、ライト兄弟ですよね。でも、世界で初めて”プロペラ飛行”実験に成功したのは、誰かご存知でしょうか?
それが今日ご紹介する日本人・二宮忠八(にのみやちゅうはち)です。
二宮はライト兄弟が飛行実験に成功する12年も前に、たった1人でプロペラ飛行実験を成功させた世界航空史の英雄です。
今回は、何度も試練に直面しつつ「空を飛ぶ」という壮大な目標に向っていった二宮忠八の人生を振り返りながらお話を進めましょう。
幼少の頃の二宮忠八
二宮は子供の頃から空や飛ぶものに興味があり、飛行機に本格的に取り組む前は、広告のビラをまいたりする奇抜な凧を作ったりしていました。
やがて21歳にった二宮は陸軍に志願します。
ある日、実践演習を終えて休憩をしているとカラスが残飯めがけて滑空してくるのを目にしました。
よく見ると、カラスがはばたくのは枝から離れた時だけ。その後は翼を広げて滑る様に降りて来ます。
「翼をはばたかせず、風を受け止めれば飛べる」
そう気付いた二宮は、西洋人が血眼になって探していた航空力学の法則を
カラスを見ただけで発見してしまったのです。
それから翼をしっかり固定し、推進力を生むプロペラを後部にとりつけ、カラス型飛行機模型を作りました。そして、仕事で使っていた聴診器のゴム管をよじり、それが戻る力でプロペラを回すと10m空を飛んだのです。まだ世の中に飛行機という言葉も概念もない頃です。
それから二宮は、たった1人で飛行機の制作に取りかかります。
誰にも理解されない、変人扱いされるとても孤独なものでした。
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