「鬼や妖怪が歩き回る日」~平安時代の貴族は「暦に書かれた吉凶によって行動する」ことが基本だった?!~

昔は、明かりを灯すための油自体が貴重だったために、庶民は夜になると寝るしかなく、貴族だけが夜にある程度行動することが出来ました。そんな貴族でも、暦には従って悪いとされる日には出かけませんでした。逆にそういった日にでかけたために、百鬼夜行に出会ったという逸話も残っているほどです。

 

【百鬼夜行の日とは?】

平安時代には百鬼夜行が行われる日があると言われていました。当時の貴族は「暦に書かれた吉凶によって行動する」ことが基本だったために、「忌夜行」と呼ばれる、日時には極力外出を控えたといわれています。

 

【平安時代の夜は暗かった】

現代のような「電気は当然無い時代」であり、さらに「ロウソクのような手軽な明かり」も、まだなかった時代です。明かりを灯すための油自体が貴重だったために、庶民は夜になると寝るしかなく、貴族だけが夜にある程度行動することが出来ました。とはいっても、その明かりは油に直接芯を刺したもので、かなり不安定だったために、光量はほとんど無く、かろうじてすぐ近くが見えるぐらいだったといわれています。

そんな状況にもかかわらず、あえて貴族が夜に出歩いていたのは、当時は「妻問婚」の時代であり、愛しい人に会うためには夜にわざわざでかける必要があったためです。そんな貴族でも、暦には従って悪いとされる日には出かけませんでした。逆にそういった日にでかけたために、百鬼夜行に出会ったという逸話も残っているほどです。

 

【百鬼夜行は浮気のいいわけ?】

ただし、当時は現在のような一夫一婦制ではなく、妻問婚も非常に緩い感じのものでしたので、他の女性のところに通う「いいわけ」として、暦の吉凶を持ち出したり、方角や百鬼夜行のせいにしたケースも多かったようです。

 

【鬼や妖怪にあったら酔っ払ったふりをする】

平安時代というと、現代よりも迷信深いイメージがあり、実際に穢れなどにたいしては神経質だったといわれていますが、百鬼夜行に関しては本当に、妖怪や鬼が出歩いていると信じていた人は少ないようにも感じられます。百鬼夜行に出会ってしまった時の呪文に次のようなものがあります。

かたしはや えかせにくりに ためるさけ てえひ あしえひ われしこにけり

このままだと、なんのことやらわからないので、神秘的な意味があるように思えるかもしれませんが、こちらは和歌であり、現代語に訳すると次のような感じになります。

「家を出る前に貯めていたお酒を飲んでしまって、手足に来て動けなくなってしまって、ふらふらでここに来ることになった、ああ、大変だった」

要は、「自分は酔っ払ってるから、なにもわからないよ、あなたは誰ですか?」といって、しらばっくれているわけです。このような呪文が通用することから、鬼や妖怪というのは、当時の「最下層の人々」だったのではないかという説もあります。
穢れた存在として昼に歩くことが許されなかった人々が、唯一自由に出歩けたのが百鬼夜行の日だったというのです。

 

【9月18日は百鬼夜行が現れる】

ちなみに今年の9月18日は忌夜行であるとされています。「23時から午前2時ぐらいが要注意の時間」というので、まさに深夜といえるでしょう。この日の月齢は約4。細い三日月が空を飾っているところであり、明かりが無くてもギリギリ歩けるけれども、出会った相手の顔を確認するのは難しいといった状態でしょう。

そういった状況の中で、最下層の人々に出会って鬼や妖怪だと思ったのか、それとも、真の闇ではないという、不安定な状況が「疑心暗鬼をかき立てて、闇の中に何かを見いだしてしまった」のか、おそらくどちらの状況もあったのでしょうが、それによって百鬼夜行は生まれたのでしょう。

 

【絵師のインスピレーションを刺激した百鬼夜行】

平安時代当時は具体的なイメージはなかったようですが、「百鬼夜行」という言葉に刺激されて、多くの絵師が、その姿を具現化していきました。著名な「河鍋暁斎」をはじめとして、お城に仕えるよな絵師までもがモチーフに取り上げたというのは、それだけ魅力的なテーマだったのかもしれません。
また、興味深いのは、これらがあまり怖くなく、どこか「ユーモラスなものが多いこと」です。これに関しては、平安時代の百鬼夜行と、絵に書かれた百鬼夜行は別物だという説もありますが、前述の和歌のように平安時代の人がもっていたユーモラスさと、江戸時代の明るさが合成した結果のような気もします。

 

【現代には百鬼夜行はもういない】

スピリチュアルな観点からすると、暦の中には、エネルギーの潮流が悪くなる日なども確かにあるわけで、そういった日には出歩かない方がいい、ということもあるかもしれませんが、百鬼夜行に関しては、現代ではほとんど考慮する必要がないといえるでしょう。
むしろ、様々な道具や動物、植物などが妖怪や鬼となって歩くユーモラスな姿が、現代までも伝わっていたとしたならば、西洋のハロウィンのように、日本の一大イベントになっていたかもしれません。

 

Day that 100 monster parade is performed.
Mysterious calendar.

 

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