博多三大祭りから考える、「徳を積む」ということ

放生会とはなにかというと、簡単にいってしまうと「殺生を戒めるためにはじまった儀式」であり、この日は殺生をしないだけでなく、捕まえた動物などを放してあげるということが行われます。

【100万人が訪れる盛大なお祭りが開催中!】

9月12日から9月18日まで、博多三大祭りのひとつといわれる「放生会(ほうじょうや)」、正式名称「筥崎宮放生会大祭」が行われています。こちらは、「1000年以上」の歴史を持つといわれているお祭りであり、2年に1度の御神輿行列をはじめとして、7日間で100万人近くの参加者が出るという大規模なものです。

今頃から9月下旬にかけて、全国各地で「放生会」は行われていますが、通常は「ほうじょうえ」と呼ぶのですが、なぜか博多のものだけは「ほうじょうや」と呼ぶところにも特色があります。

 

【放生会っていったいなに?】

ちなみに、この放生会とはなにかというと、簡単にいってしまうと「殺生を戒めるためにはじまった儀式」であり、この日は殺生をしないだけでなく、捕まえた動物などを放してあげるということが行われます。この起源は釈迦の前世であった人物だといわれていますが、このあたりはあくまでも昔話であり、殺生を戒めるためのたとえ話といえるでしょう。

そんなたとえ話をベースにして、実際にお坊さんが魚を買って放したりするようになり、いつの間にか、仏教だけでなく神道でも同じようなことが行われるようになりました。前述の博多の放生会が神社で行われるのも、このあたりに理由があります。

 

【お金で功徳を積む】

本来は命の尊さを知るために行われるのですが、年月と共に趣旨が変わってきており、わざわざ「自分でお金を出して、金魚などを買ってから近くの池に放す」ことで功徳を積むというようなことも行われるようになっています。

これが、日常的に行われているのが「タイ」。タイでは仏教が国民のほとんどに信仰されていますが、日本の仏教とはちょっと違ったところも多くあります。仏教では輪廻転生を認めていますが、「来世で幸福になるためには現世で徳を積む必要がある」と、タイの人たちは信じているのです。

では、具体的にどうすればいいのか? 僧侶になって修行するのが最上とされていますが、みんながみんな僧侶になるわけにはいかないので、一般の人は「僧侶に施しをすることで徳を積む」のです。施しというと、残飯や余り物を渡すイメージがありますが、タイでは「喜捨セット」とでもいう、施しの為の一式が売られています。

また、放生会と同じような発想で、「逃がすための鳥や小魚を売っている」業者も存在しており、徳が足りないと思った時には、これらの動物をわざわざ購入して逃がすということも一般的に行われています。

 

【果たしてお金で本当に幸せはつかめるのか?】

こうやって見てくると、気がつくことがあると思います。それは徳を積むためには「お金が必要になる」ということです。裕福な人たちはどんどんと喜捨をしたり、動物を救って徳を高めることができますが、そんな余裕がない人たちは喜捨することすらままなりません。

つまり、タイの輪廻転生観でいうと、「現世でお金がなければ、来世でも幸せになれない」、すなわち負のスパイラルにはまっているわけです。ちなみに、「もっとも徳が積める方法は寺院建立」ということなので、とうてい庶民に可能なレベルではないことがおわかりだと思います。

なんとなく、中世にカトリックの教会が販売して、宗教改革の端緒となった「贖宥状(しょくゆうじょう)」、別名「免罪符」のような雰囲気があります。贖宥状とは、「罪の許しをお金であがなうことができる」として、中世ヨーロッパで大々的に販売されていました。こちらは、一種のお札であり、こちらを買うことですべての罪が赦されて天国へいけるというものだったのです。

この収入は莫大なものであり、教会は収入をより増やすために、町や村に贖宥状説教師と呼ばれる人物を派遣して各地で売りまくっていたほどです。お金で総てが許されるという思想に疑問を持ったルターによって、宗教改革がなされて、このような風習はなくなったわけですが、言い方は変わっていても、タイの徳を積む手法は贖宥状とほとんど一緒といえるでしょう。

お祭りの時や、なにかの機会に「生命の大切さに触れる」というのは重要なことであり、信仰をもったり、修行をしている人をサポートするというのも大切ですが、それを利己的な心から行ったとしたら、果たして本当に御利益があったり、徳が積めているといえるのでしょうか?

お金を使って手軽にすべてを解決するのではなく、「自分自身の心がどのような感じるのか、そしてどのようにそれを活かしていけばいいのか」を、しっかりと考えることこそが、本当の意味で徳を積み、来世をよくする方法ではないでしょうか?

Festival of cherish the creatures.
Gain virtue in money?