時代の流れは健康経営へ

数年前から言われている言葉でしたが、アベノミクスが始まってからかなり強調されるようになりました。 最近だと、東京証券取引所の上場会社から健康経営に優れた企業を「健康経営銘柄」に選定する取り組みがスタートし、健康経営銘柄のインデックスがTOPIXを上回っているということで注目を集めました。

先日、経済産業省主催の「健康経営・導入支援セミナー」に参加してきました。

健康経営」ってみなさん聞いたことあります?
この言葉の定義はまだ定まっていないようですが、ざっくり言うと、

従業員の健康に投資することによって生産性を高め、医療費を抑えて企業の収益向上と企業価値の向上を目指す戦略

のことを言います。
数年前から言われている言葉でしたが、アベノミクスが始まってからかなり強調されるようになりました。
最近だと、東京証券取引所の上場会社から健康経営に優れた企業を「健康経営銘柄」に選定する取り組みがスタートし、健康経営銘柄のインデックスがTOPIXを上回っているということで注目を集めました。

健康経営銘柄 vs TOPIX
(経産省ホームページより)

 

主役は健康か?経営か?

健康経営が押し出されてきた背景の一つには国民医療費の増大があります。
平成24年度に39兆円を突破し、このままでは平成37年度には60兆円に達すると試算されています。

病気になる人が増えるから医療費が増える。
逆に健康な人が増えれば医療費は減る。

ということで、医療費の適正化とアベノミクスの経済再興の一つとして「健康」というところに目が向けられたわけですね。
なのでぼくは厚生労働省が主体で動いているものだと思っていました。

ところが今回のセミナーでも厚労省の名前はなく、経産省、商工会議所、日経など、経済界の名前ばかり。

健康経営の主体は「健康」ではなくあくまで「経営」で、企業経営を良くしていくために健康を取り込んでいこうとする取り組みなのです。

ぼく個人としては、収益性が向上し企業価値が高まるのは結果としてであり、従業員の健康に投資して従業員をハッピーにすることが健康経営の根っこであるべきと思っています。

しかし逆もまた真なり。

「労働は重要であり、また、自尊心及び秩序観念形成の上で大きな心理的役割を演じると指摘されている。そしてそれは生存に活力を与え、日・週・月・年の周期的パターンを形成する。失業は、それ自体健康に対して悪い影響を与える。……」

WHO(世界保健機関)もこのように言及しています。
すなわち、景気が悪くなると失業が増え、身体的にも精神的にも不健康な人が増加します。(統計的に自殺者も増えています。)

逆に景気を活性化し、企業活動が活発になることで職が増え、賃金が上昇し、健康でハッピーな人が増えていきます。
経営改善の切り口から健康経営に乗り出すのもまた肝要なのだろうと思います。

健康経営セミナー

 

 

大切なのは健康意識を根付かせること

ぼくがこの健康経営で並べて考えてしまうのが、「ECOの取り組み」です。
ぼくは仕事の関係で出張が多く、ビジネスホテルに泊まることが多いのですが、どのビジネスホテルに泊まっても決まって書いてあるのがこの「ECOの取り組み」なんです。

部屋のデスクの上にカードが置いてあって、
「当ホテルはECOの取り組みを推進しています。連泊の方で部屋の清掃が不要な方にはお水を一本プレゼントしています。」
トイレに入ると、
「当ホテルは地球環境を考えて、トイレットペーパーを使いきるまで交換いたしません。」
だいたい決まってこの2つはあります。

ぼくこの動きが始まりだしたころ、気になってホテルのフロントに尋ねたことがありました。

高 橋 「こちらではECOの取り組みをされているそうなのですが、他にはどういうことをされているんですか?」
フロント「いえ、とくには。」

みなさんお気づきだと思いますが、これは単にホテルの経費削減のためにECOという名を借りる作戦(方法)であって、企業戦略の一つとしてのECOではありません。
結果的に地球環境にとって優しいのであればいいことではありますが、はっきり言ってこれでは企業としても従業員にもECOに対しての認識がまったく醸成されません。

今回の健康経営もこれに近いものが一部出てくるのではないかと懸念しています。
すなわち、「企業のイメージを良くする」「医療費やコストを削減する」「強制的に運動などをさせる」ことなどが先行して方法論に固執してしまい、企業にも従業員にも「健康が大切である」という意識がまったく育っていかないという、健康経営という名を借りてるだけのケースです。

従業員の健康のためなのか?
それとも企業の健全経営のためなのか?

スタートはどちらでもいい。ただし、企業にとっても従業員にとっても「健康が大切だ!」という意識を醸成し、企業文化として根付かせていくことが健康経営の目指すところだろうと思います。

 

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