平和な植物と戦闘モードの植物にみる健康効果の違い

私たちが何気なくたべている野菜。ほとんどは農薬で保護され、見栄えがいい野菜です。一方、自然栽培の野菜は小ぶりです。その違いはどこから来るのでしょうか。そこから生薬原料の将来に対する懸念が見えてきました。

こんにちは。アーユルヴェーダスクール ジヴァ・ジャパン代表でアーユルヴェディック・カウンセラーの文分千恵です。

アーユルヴェーダは、口で感じる味は6つあると定めています。
甘味、酸味、塩味、辛味、苦味、渋味です。
ほとんどの野菜には苦味が含まれています。
苦味のない野菜は思いつきません。
トマトは酸味が強いですが、青いトマトは苦味ですね。

 

なぜ野菜は苦いのか

なぜ野菜は苦味が強いのでしょうか。
害虫から身を守るためです。
植物は自分の力では移動できないので、害虫に襲われてもなす術がありません。
そのため野菜は戦闘モードになって、苦い香りを出して害虫を寄せつけないようにしているのです。
苦味を好む害虫はいません。
たとえば、インドに自生しているニームという植物は苦味No1。
葉は口が曲がりそうなほど苦いです。
害虫は寄ってこないので、ニームパウダーを土壌に混ぜたり、ニームウォーターを蚊よけに使ったりしています。

私たち人間の体内の臓器も苦味を好みません。
消化官が苦味を感知したら、毒と判断します。
毒は一刻も早く体外に排出しなければなりません。
そのため苦味を食べ過ぎたら下痢になることがあります。
アーユルヴェーダでは「苦味は余分な水分や脂肪分を取り去る」といいます。
その仕組みは、苦味は内臓から毒とみなされているからなのです。
たくさんの害虫から襲われそうになっている野菜は、身を守るために苦味を強くします。
その多くは抗酸化作用があるポリフェノールです。
私たちの体によい成分です。

 

平和ボケしている農薬野菜

一方、農薬を大量に使って害虫がいない土地は、野菜にとっては居心地がよい環境です。
命が脅かされる心配がありません。
害虫に対して戦闘モードになる必要もありません。
だから、のんびりとズータイばかりが大きくなり、苦味を出す必要もないのです。
できあがった野菜はしまりがなく、味に強さと深さがありません。
たとえば大根。
日本の土地は水分が多いし、農薬も使っているので、苦味や辛味が少なくズータイが大きな大根ができあがります。

野菜にとって天国のような環境は野菜工場です。
ハエ一匹飛んでこないのですから。
ボーっとしていても生きていけます。
それでは苦味の薄いボケボケの野菜になってしまいます。
そこで人間は考えました。

「野菜に地獄の環境を与えよう!」

野菜工場では極端に照度を高めた光を野菜にあて続けます。
なんだかスパイ映画の拷問のようですね。
危機感を感じた野菜は戦闘モードに入り、思いっきり苦味を出すのです。
こういう野菜がステーキチェーン店などに出荷されているそうです。

 

あまり手をかけられていないインドの野菜は味が濃くて小ぶり

一方、インドの大根は小柄で水分が少なく、濃い味がします。
どの野菜も日本のものより小ぶりで味がしっかりしています。
乾燥して灼熱の太陽にさらされるインドの土地は、野菜にとっては過酷な環境。
害虫もゴマンといるし、バクテリアの襲撃もすごいかもしれません。
つねに戦闘モードにあるので、ズータイは大きくならず、苦味は強くなります。

日本は収穫量を増やすために大量の農薬を使った結果、土地はやせ細り、野菜の栄養素含有量は昔と比べて大幅に減っています。

人参のビタミンA含有量は50年前の1/6以下、ほうれん草の鉄分は50年前の1/7以下に低下しているというデータもあります。

 

気になる生薬原料の将来

そう考えると、植物の薬効にも違いがありそうです。
アーユルヴェーダにおいてショウガは最も大切な生薬ですが、インド産のショウガのほうが日本産より薬効が高いかもしれないと推察されます。
インドのショウガが日本ほど大切に育てられていて平和モードにあるとは考えにくいからです。
日本のショウガが水っぽいのに対して、インドのショウガは水分が少なく、身がしまっています。
戦闘モードだからですね。

気になるのは生薬原料の将来です。
中国の自生の生薬原料は底をついており、輸出を規制していますが、中国国内用も不足しているといわれています。
アーユルヴェーダの生薬原料も、世界的なアーユルヴェーダブームにより、自生のものは遠からず消滅するだろうと懸念されています。
そうなれば農地での栽培が避けられません。
農薬を使用するかもしれません。
植物にとってはラクチンな生活です。
平和ボケした生薬原料の植物は苦味の分泌を減らすかもしれません。
それは薬効の低下につながります。
その対策を考えなければならない時期に来ています。

 

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