なんだかまったくの別件で話をしていたはずなのに、陰陽師ますじは突然、真面目な顔をして私にこう言った。
「みほじ、年内に行かなきゃいけないところ、あるよね?」
「は?」
「呼ばれてるとこ、あるよね?」
(や、どこからも)という気持ちで首をかしげる私。
「どこだか、わかるでしょ。呼ばれてますよね、あなた」
(や、何も)と、ますます首をかしげる私。
真顔の陰陽師の説得力はそれはそれはすごいものだけど、私は勇気を出してこう言ってみた。
「あたし、何も浮かばない。呼ばれてる感じ、全然しない」
と言いつつも、実はその時一ヶ所だけ心当たりのある神社が浮かんでいた。
【それは思考かインスピレーションか】
しばらく前に、先輩霊能者りえちゃんとますじが、11月中に行くと言っていたあの神社。
ほんの数日前にも「みほじも行こうよ」と、ますじから誘われ瞬殺で断ったあの神社。
名前を言ってはいけないあの人の、アーとか、マーとかつくあの人の、本拠地のあの神社。
しかし、私の思考はそこからフル回転で、この人たちと一緒に旅に出ないための理由を探し始めた。
なんにも浮かばない(その神社以外には)。
ちらっとよぎったその名前をとりあえず消去消去。
きっと、私がひとりでいくべき神社のはず。
そう、時間的にも金銭的にも神様は私にそんな負荷をかけるはずないから、きっと東京あたりの、車でひょいっといけるようなところだろう。
そもそもメッセージを受け取る意欲そのものが出てこないけども?
やっぱり全く浮かばない(その神社以外には)。
そして最後に、天にこう聞いてみた。
「神様、この人たちと一緒に行く以外で、私が呼ばれている場所はどこですか?」
【リーディングin やきとりセンター】
その日の夕食は、陰陽師ますじの強い希望により、やきとりセンターになった。
ひとしきりおいしい焼き鳥を堪能した後に、また例の話題が持ち上がった。
「そろそろなんか浮かんでこない? 映像とか」
「え~?」
仕方ない、ちゃんとリーディングしてみるか。(←単に、リーディングができないと思われるのが嫌というのが動機)
ふと浮かんだのは、屋根の上に立派な尾をした鶏がとまっている映像だった。
これは……!?
「平等院鳳凰堂かな?」
「は? ちがーう!」やきとりをほおばりながら、陰陽師ますじは鋭く言った。
「神社だよ、神社!」
(もー、なんで? 寺でもいいじゃん! 私お寺好きだし)
と思いつつも、仕切り直してもう一回。
ふと、やきとりセンターの掲示が目に入る。
『55』という数字が印象的なポスターだった。
『55』は私の中ではジーザスの番号なので、なんとなく顔もほころぶ。
そのポスターを眺めながら私は口を開いた。
「ん~……赤い鳥居の上に、鶏が一羽とまっている映像が視えるよ?」
「みほじ……適当なリーディングやめてくれる? そこのポスター見たまんま言ってるでしょ」
ばれたか。
「ごめんごめん。ちゃんと気合入れてやります」
再度仕切り直し。
【ご神託は、選ぶ余地がない】
いつものように、センターに入って……と思ったら(あ、ここやきとりセンターだ)とかくだらない考えが頭をよぎる。
だめだめ、余計なこと考えちゃ。天とつながって~……「神様、私が行くべきところはどこですか?」と真剣に聞いてみた。