「人間を凌駕しはじめた人工知能」 〜人工知能の可能性(2)〜

果たしてこの先、私たち人類と人工知能は友好関係を維持していけるのでしょうか?

【人間を打ち負かす人工知能】

これから、人工知能はどのように進化していくのでしょうか? 前回、人工知能は「人間が想像できないレベルでの行動をしているわけではありません」と紹介しましたが、徐々に人間のレベルを凌駕し始めているものもでてきています。

その中でもかなり話題となったのが、今年3月に「囲碁でトップクラスの棋士を連敗させたアルファ碁」。囲碁のようなボードゲームは、人工知能が得意とする分野であり、チェスはかなり早い段階で、人間を凌駕するソフトウェアが存在していましたが、囲碁で人間に勝つようなソフトウェアが出来るのは、「時間がかかる」と思われていました。

なぜながら、チェスの局面数は「10の120乗」、将棋は「10の220乗」、囲碁は「10の360乗」というように、ボードゲームの中で「最も局面数が多かった」ためです。これを計算するためには、現在のコンピューターでは「処理速度が追いつかない」ために、人間に人工知能が勝つのは難しいとされたのです。ではなぜ、そんな囲碁で世界トップクラスに勝利できるようになったのか? それは、処理能力が発展したわけではなく、前回の記事でも紹介した「ディープラーニング」を利用したためです。

今までのボードゲームに対応した人工知能は、膨大な局面を分析して最適なものを見つけるために処理速度などの問題がありましたが、アルファ碁はディープラーニングによって、人間ですらわからないような、判断をすることが可能となったわけです。

 

【クリエイティブな分野にまで進出する人工知能】

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ボードゲームなどは、元々コンピューターが人間を凌駕していた分野ですが、「人間ならではの創作力が必要となる分野」までも、人工知能は成果を出しつつあります。ちょうど、「アルファ碁」が話題となったのと同じ時期に、人工知能が「星新一賞」の一次選考を通過しました。

つまり、人工知能が書いた小説が一次選考とはいえ認められたのです。人工知能は、与えられた情報をもとに最適を選ぶことはできても、自ら新しいものを産み出す力はないというイメージがありますが、小説という人間にとっても、「クリエイティブな能力が必要なもので認められてしまった」わけです。

これは未来大学の松原仁教授がプロジェクトを統括する「小説を書く人工知能の開発を目指す」という研究の成果ですが、厳密にいうと大まかなストーリーは人間が考えており、それをベースに人工知能が文章を組み立てたものであり、「完全な創作」ではありません。しかしながら、今回の成果をもとに、2年後には「ストーリーを自動で作り出す人工知能も完成させる」という目標を掲げています。

 

【人の命を救った人工知能】

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さらに、「人工知能が専門の医師でも診断が難しい症状を見抜いて、人間の命を救った」というケースもあります。これは、「東京大学医科学研究所」が導入したIBMの人工知能「ワトソン」によるもの。

この人工知能は、様々な分野で活躍していますが、東京大学医科学研究所が導入し、「2000万件を超える研究論文や、1500万件を超える薬の特許情報を学習させた」ことで、医師からは「急性骨髄性白血病」と診断されたものの、数ヶ月治療を続けても改善されなかった60代の女性の病状を10分間分析しただけで「二次性白血病」という珍しい病気だと診断し、その結果を元に治療した結果、「症状が改善し無事に退院する」までにいたったのです。

人工知能の中でもワトソンは、かなり色々な分野で利用されているために、今後は医師からの診断を受ける前に、ある程度の症状を判断するだけならば、「人工知能に訪ねるだけでOKになる」という日もすぐそこまできています。他にも人間の戦闘機パイロットが人工知能によって敗北するなど、今年に入ってから、どんどんと人工知能が人間を上回るケースが増えてきました。

冒頭で紹介したように、まだ想像できないような行動は取っていないものの、アルファ碁の手をプロが読み取れなかったり、小説すら書けるようになってきたことを考えると将来的には、人間を上回ることも現実的になってきました。

 

【人工知能の反逆が現実に?】

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イギリスの著名な宇宙物理学者である「スティーブン・ホーキング博士」は「人工知能が進化することで人類の脅威になるという趣旨の発言」をしています。そんなホーキング博士や、電気自動車の先駆者である「テスラモーターズのイーロン・マスク氏」が参加している「非営利組織Future of Life Institute」は、国連宛に「自律ロボット兵器の禁止を訴える公開書簡を提出する」など、人工知能が将来的に人間に害を与えないように注意を払っています。

このような懸念はかなり現実的なものであり、前述したアルファ碁を開発した「DeepMind」社の研究者が、Future of Life Instituteと共に、人工知能が人類によって驚異となるような行動をとったり、人間を害したりコントロールから外れそうになった場合に、強制停止をさせるための「非常ボタン」を開発したと発表しています。

ボタンというと、物理的なもののようなイメージがありますが、実際は「人工知能が人間の介入を妨害するようにならないために、妨害方法を学習できないように、自らの考えを誤認するようなシステムも含まれており、かなり本格的なものといえます。

人の命を救うだけの力を持っていると言うことは、「使い方を誤れば大きな被害をもたらす可能性もある人工知能」、遠くない未来に人間を越えるだけの能力を発揮することが予想されるだけに、たんに開発を進めるのではなく、いかに人間の制御下に起き続けるかという研究も常に行う必要があるのでしょう。果たしてこの先、私たち人類と人工知能は友好関係を維持していけるのでしょうか?

 

Artificial intelligence has won the man.
Rebellion action by the artificial intelligence.

 

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