【農業の変革】肥料を使用しないと本当に土は痩せていくのか?

農薬と肥料を使用しない
自然栽培という栽培方法をご存じでしょうか?

奇跡のリンゴの木村秋則さんで【自然栽培】という言葉が知られるようになりました。

私のところには、
自然栽培で育てたお米に関する多くの質問が届きます。

その中で、一番多い質問は
「肥料を使用しないと土が痩せてきませんか?」というものです。

おそらく多くの方が
「肥料を使用しないと土は痩せる」と思うでしょう。

これは、実は、
戦後から始まっている思い込みです。

現実は、
肥料を20年間使用していない田んぼでも
毎年ちゃんと収穫ができるのです。

一体なぜ肥料を使用しない水田で
毎年収穫ができるのでしょうか?

 

【土作りを自然の摂理から学ぶ】

土は全ての農作物の基盤です。

土作りは、持続可能な農業のためには必須事項と謳われますが
「土」と聞いて何をイメージされるでしょうか?

砂粒ですか? 茶色の塊ですか?
または、窒素、リン、カリなどの栄養分を含むものでしょうか?

土の本質を知るために
土が出来る仕組みをお話します。

火山が噴火し、火砕流が流れ
裸地化しても10年もすれば樹木が生息してきます。

自然界では、
裸地化しても徐々に生物量・物質量が増える仕組みになっています。

作物の育たない岩石でも
風化作用と生物の働きにより土壌へと変化していくのです。

ここで
最も大事なポイントは
「生物の働き」です。

土壌の本質を見るうえで
最も大事なポイントは
肥料分・栄養分でなく【土壌微生物】なのです。

 

【肥料ではなく土壌微生物がいないから土壌が痩せる】

土の本質は、
栄養分でなく、【土壌微生物】です。

私達が自然栽培で農薬を使用しない理由は
この土壌微生物の働きに焦点を当てているからです。

農薬や除草剤を使用すると土が固くなりますが
これは、生物の働きが弱くなったためです。

「本当に肥料を使用しなくても土が痩せないのか?」
この疑問への答えとして、下の写真をご覧ください。

熊本県で農薬も肥料も一切使用しない
自然栽培歴5年以上の冨田 親由さんの春先の田んぼです。

左側の冨田さんの田んぼでは、5年以上肥料を使用していませんが
春草の生育の勢いが良いのが分かります。

左側の自然栽培の水田の方が
地下部で良い土壌環境を創り上げているためです。

春草がそれを教えてくれています。

自然栽培米農家が栽培において気を付けていることは
【土壌微生物】を豊かにすることです。

そのためには、土壌微生物のエサ(有機物)が必要です。

このエサ(有機物)は主に下記の3つです。

・収穫時の粉砕された稲わら

・稲の地下部の残根

・春先に田んぼに生える春草

つまり、全ての有機物は外から人為的に持ち込んだものではなく
その田んぼで作られた有機物が循環している状態です。

実はこれが
昔の日本の本来の農業の在り方です。

自然栽培米は、農薬・肥料を使用する慣行栽培米に比べて
収量は約60%ほどとなりますが
自然を破壊しない持続可能な農業が可能となります。

自然栽培米農家の冨田さんは、
春先に田んぼを回り土壌の土のにおいをかいで
土壌微生物が豊かであることを確認しています。

戦後の食糧大量生産の流れで
農薬・肥料の使用が当たり前となりました。

私達は、西洋的な思想を取り入れ
土壌の中の栄養素という物質に注目して、
足りないものを補うという農法になりました。

しかし、
土の本質は【土壌微生物】です。

「肥料がないと土が痩せる」というのは実は違います。

正しくは、

「土壌微生物がいないと土が痩せる」です。

皆様が、お米や野菜・農産物を買われる際に
もう一つ新しい視点を持たれることをお奨めします。

それは、
「この農作物は、生物の命が豊かな土で育っただろうか?」

本来、食べ物とは
私達の命を養ってくれるものです。

私達の命を養う食べ物は
生物の命が豊かな土から生れたものです。

生き物の命を大事にする農業が
これから日本に必要になってきます。

 

《井田 敦之 さんの記事一覧はコチラ》
https://www.el-aura.com/writer/shizensaibai/?c=156960