一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.99 「あまくない砂糖の話」

映画はヒュー・ジャックマンがカメオ出演していたり、ミュージカル仕立てだったり、アニメを使っていたりと飽きさせないポップな作りで、内容が深刻な割に楽しく見られる。しかも、展開はこの上なく興味深く面白い。そしてぞっとさせられる。

二ヶ月間砂糖を食べ続けたらこうなった!
砂糖は体も心もボロボロにする!!

怖ろしいドキュメンタリー映画である。
私はこのコラムで何度か書いてきたが、食べ物には非常にうるさい健康オタクだ。砂糖の害についても「白砂糖の害は怖ろしい」という書籍はもちろん食品や健康関連の本は200冊以上は読んでいると思う。
しかし、だ。私は甘いものがとても好きなんである。だから、本を読んでは「やっぱり砂糖はダメよ! ケーキはチョコレートはやめよう!」と思う。思うんだけど、きっぱりは止められないのだ。止めていても、たまに無性にチョコレートが食べたくてしかたなくなってチョコ一袋一気食いしたりしてしまう……。

しかも毎日食後にお菓子類を食べずにはいられない。どこが健康オタクだって話だけど、甘いものだけが、私の食生活でネックなんである。
でも、人間は甘いもの、酒、ギャンブル、タバコといずれかに依存する生き物らしいから、ま、私は甘いもの、てことで(笑)。なんて本作を観たら笑っていられない。

本作はいかに、砂糖を人類に食させて、人々を病気にして殺していこうという闇の政府の長期的な陰謀を感じずにはいられない、本当に怖ろしい作品なのだ。単に砂糖の害を教えてくれるだけではなくて、政治的な裏側も見せてくれる監督自ら身を張った、秀作ドキュメンタリーである。

砂糖_サブI

 

砂糖によって滅ぼされる村
虫歯だらけの少年……砂糖中毒の恐怖!

さて、本作は監督自らが60日間ティースプーン40杯分の砂糖を摂取するという実験を始めるところからスタートする。人は一日平均で40杯もの砂糖を摂取しているということを知り、それもヘルシーだと謳われる食品にそんなに? ということで、ヘルシーな食品を食べ続けて体と心の変化を記録。医師や栄養士のサポートと管理を得て実験を進めながら、監督は砂糖の加工食品によって多大な健康被害をこうむったアボリジニのコミュニティや、世界一の肥満大国アメリカに取材に出向く。

アボリジニの村では70年代以降スーパーマーケットが立ち並び、そこで売られるコカ・コーラ社の甘い飲み物によって、村民は健康を害し、村が無くなる勢いの死亡率だそうだ。アボリジニの人々は町から砂糖を排除して欲しいと訴える。

また、一番印象に残っているのは、アメリカのケンタッキー州の17歳の少年の歯だ。彼は2歳の頃からペプシのマウンテンデューという甘い飲み物をミルクの代わりに哺乳瓶に入れて飲んでいたという。低所得者の家庭ではそれが当たり前らしい。マウンテンデューにはティースプーン37杯分の砂糖とコーラより50パーセントも多くのカフェインが入っている。おかげで今、彼の歯は全て虫歯! 26本もの虫歯を泣きながら抜かれても、彼はマウンテンデューを飲むのをこれからも止めないと言う。
砂糖は中毒性があるから、決して止めることができない。企業はそのことを知っていてさらに、科学者の手で砂糖の至福点を見つけることによって、どんどん砂糖中毒者を増やし続ける……。怖ろしい……。

砂糖_サブF

最近思うに、甘いものを食べて感じる至福感というのはセックスのオルガスムスと似てる気がするのだ。ううむ、これは、私もかなり中毒気味かも、だ!

当の監督はどんどん顔色が冴えなくなっていって、太ってだらしなくなり、生気がなくなってくる。砂糖を食べないと元気がでないし、食べるともっと欲しくなり、やめられない。完全に中毒だ。糖尿病の初期症状も見られた。
かくして監督の体と心は60日間でガタガタになる。

砂糖_サブG

 

無知ではいられない現代社会
自分の口に入れるものは覚悟と納得が必要

今、スーパーには砂糖の入っていない加工食品はほとんどないといっていいだろう。どうしてこうなってしまったのか?
それは闇の政府の陰謀があるのだけど、それを置いといても、私たちは自分の食べるものを厳しくチョイスしていかないといけない。そのためには無知でいてはいけないのだ。知ること。勉強することは大事である。その上で、自分の口に入れるものを納得、覚悟の上で選択しなければ身を守れない時代なのである。現代は。

映画はヒュー・ジャックマンがカメオ出演していたり、ミュージカル仕立てだったり、アニメを使っていたりと飽きさせないポップな作りで、内容が深刻な割に楽しく見られる。しかも、展開はこの上なく興味深く面白い。そしてぞっとさせられる。

「人間の体は砂糖を取るようにできていない」。
その言葉がいつまでも私の中に残った。

さて、食後のお菓子類を少しずつでも減らしていきますか……!

砂糖_サブB

 

■監督・脚本・出演 デイモン・ガモー
■出演 ゾー・タックウェル=スミス スティーヴン・フライ ブレントン・スウェイツ イザベル・ルーカス ジェシカ・マーレイ
■102分

※東京 シアターイメージフォーラムにて上映中
※大阪 4月 第七藝術劇場にてロードショー

『あまくない砂糖の話』チラシ表 『あまくない砂糖の話』チラシ裏

 

《一宮千桃さんの記事一覧はコチラ》
https://www.el-aura.com/writer/ichimiyasentou/?c=26311