一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.94「海難1890」

日本の誇るべき美点がいくつも描かれていて、 美しい、優しい気持ちにさせてくれる数少ない貴重な映画である。日本人であることを誇りに思って欲しい作品だ。

日本人の美点が丁寧に感動的に描かれる
トルコが100年後に日本に恩返し

「日本人は特別な民族である。これからの世界を導いていくのは日本だ」
スピリチュアル系の本では最近よく眼にする言葉だ。
中矢伸一さんの日月神示や大本教のことを書いた本、中丸薫さんの著書などで、日本や日本人についての驚くべきルーツが語られていて、私自身日本人として生まれてきた意味を考える日々でもある。
私は彼らの著書を読んで、日本人であることを誇りに思うようになった。
震災以後、日本人の行動は世界から賞賛されているが、ここ最近映画界でも日本人の素晴らしさを描いた映画が何本(「杉原千畝」等)も製作されていて、これは意味があることなんだな、と思わずにはいられない。
その中の一本と言えるのが本作だ。
そして中でも秀逸な出来である。

1890年に、和歌山県沖でトルコの軍艦が台風により難破、座礁する。

乗員650名のうち69名しか助からなかったエルトゥールル号海難事故。当時としては世界最大規模の海難事故だったそうだ。
その69名を高波の中、海に入り助けあげ、献身的な介抱をして救ったのが地元の村の人々だ。
彼らは自分たちも食べる物が乏しい中、自分たちの分を傷ついた乗員たちに分け与え、海に散らばった遺留品や漂着物も引き上げて修理し送り返したという。
この人々の厚意はトルコ国民に感銘を与え、トルコでは教科書にも載っていて後世まで語り継がれている逸話だという。

メイン②

 

船員たちを命がけで助ける村人たち
子供たちの慈悲の行為に涙溢れる

ここまで前半部分なのだが、もう涙涙である。
500名以上が亡くなった悲惨な事故の様子。
遭難した異国の大男たちを我先に助け必死に介抱する村人たち。それは子供たちも同じだ。自分たちも本当はひもじくて食べたい貴重な鶏肉をトルコ人に差し出す少女。それを「おたべ」とひとかけ返されて、その小さなひとかけの鶏肉を半分にして自分より小さい子に分け与え、その小さな子はまたそれを半分にして自分より小さい子に分け与える。そして「ふふっ」と嬉しそうに鶏肉を頬張る子供たち。もうここ、号泣! でした。
自分の持っている貴重なものを人に分け与えることができる。こんな小さな子でも慈悲の心を当然として持っているのである。
また、遺留品が消えたと言って激怒する大尉が村の医師に見せられたものは、漂着したサーベルや工具などを綺麗に洗って乾かし磨く子供たちの姿だった。

こんなことまでする民族他にいてないよ、ほんと。
日本人の美しすぎる真心と行為にだだ泣きでした。

サブ2small

 

1985年テヘラン邦人救出劇の決断!
忘れてないよ、100年前のありがとうを!

そして後半は約100年後。1985年のテヘラン。
イラン・イラク戦争で空爆が続くテヘランで取り残された約200名の日本人。
脱出しようにも、日本政府は救援機を飛ばしてくれない。
サダム・フセインは48時間後に無差別攻撃を開始すると宣言。
飛行場には多数の人が詰め掛ける。そしてトルコの救援機が最後の搭乗になると知った日本大使は、その機に日本人を乗せて欲しいと要請するのだが……!

サブ51000k

ここも涙です。
もちろん、トルコの人々もあっさり飛行機を譲ってくれたわけではない。でも、思い出すのである。
100年前、自分たちトルコ人が日本人にしてもらったことを。ここで恩を返そうと。

外国の人というのは、ほんとうにされたこと(良い事も悪い事も)を何年たっても忘れない。
日本人はなんでもサッサと忘れてしまうけど。
杉原千畝さんにビザをもらって助かったユダヤ人たちの子孫も、決して杉原さんのことを忘れなかったものね。こういう「忘れない想い」って、本当に感動させられる。

感動しながら、同時に自国の民を見捨てた日本政府を恥ずかしく歯がゆい気持ちにもなった。
国際紛争に自国民が巻き込まれた時には、真っ先に国民を助けるために救援機を出さんかいっ、である。
いつも日本政府は他国に比べて自国民の救出に出遅れる。国民を大事に思っていない証拠である。

 

 日本人で良かった?なぜ日本に生まれた?
自分なりに答えを出していきたい

丁寧な作りの作品である。
作り手の真摯な気持ちが滲み出ている真面目で美しい映画だ。
日本人として誇るべき美点がいくつも描かれている。
美しい、優しい気持ちにさせられる映画って珍しいと思う。

たくさんの若い人に観て欲しいと思う。
そして日本人として生まれた自分のことを誇りに思って欲しい。また、素晴らしい日本人たちが祖先だと知って欲しい。
これからの日本を、世界を導いていくためにも。

サブ⑥ small

■監督 田中光敏
■脚本 小松江里子
■出演 内野聖陽 ケナン・エジェ 忽那汐里 アリジャン・ユジェソイ 夏川結衣 
永島敏行 竹中直人 笹野高史
■132分
■12月5日(土)~全国ロードショー

■コピーライト ⓒ2015 Ertugrul Film Partners