一揆を先導した実在のヒーローを描く
感動の傑作娯楽時代劇の登場!!!
いつの時代も虐げられる者たちはいる。そして、それらを虐げる上に立つ者。その上のやつらを苦々しく思い、虐げられる者たちを助ける者。物語のパターンとして人気の構造だ。そして、多くの人はこの手の話が好きだろう。かくいう私も大好きで、このヒーロー像が複雑であれば、ヒーローを助ける仲間が個性的であれば、虐げる悪が極悪であれば、虐げられかたが悲惨であれば、話は感動的なものとなる。
本作はこれ全部クリアしている、稀有な近年の時代劇だ。しかも、舞台はあまり馴染みのない室町時代。果敢に映像化したスタッフに拍手。文句なく面白い傑作娯楽活劇である。
大泉洋。あまり好きではなかったが、最近人柄も含め、見直した。NHKの「ファミリー・ヒストリー」でも好感度大になったし、今作も素晴らしい演技と殺陣を見せてくれる。渾身の演技だ。その大泉が室町時代に本当にあった農民たちの一揆を指揮したという実在の人物、蓮田兵衛を演じる。
大飢餓と疫病で京の町は死体が山と積まれ、人々は困窮し世の中は混乱を極める。幕府は民衆を助けるでもなく、享楽の日々。兵衛はそれを見つつ、一揆の好機を狙っていた。立ちはだかるのは、洛中警護役を担う旧知の仲の骨皮道賢。道賢の目を欺きながら、兵衛は才蔵という少年を拾い、剣術を教え込み育てる。そして、仲間を集いついに一揆を企てる!!

今作一番の収穫の逸材!!
長尾謙杜の凄まじいアクションに目が点!!
本作、一番の収穫。才蔵役の「なにわ男子」の長尾謙杜の凄まじいアクションだ。えっこれ誰? というくらい目を見張る棒術のアクションを見せてくれる。彼が主役?(まあある意味主役かも)というくらい見せ場があって、かつ、そんな長刀ばりの長い棒で見せるアクションなんてどれだけ難しいか、見てるだけで「ものすごい頑張ったんやろなー」と驚愕。唖然。感心。感動。
「この子、凄いわあ!」と目が離せなかった。ジャッキー・チェン顔負けである。香港でもハリウッドでも行けそうー!! 彼が師匠について特訓を重ねるシーンは少年漫画のようで楽しく面白い。

無頼のまま散った魂に涙……!
人々の希求を描く物語は現代にマッチ!!
そして、一揆だ。いや、綿密にルートを考え、幕府軍を翻弄し御所まで進み、たった9人で御所前まで来るが、そこで仲間はつぎつぎ倒れていく。彼らの無念の想いに涙……。凄い殺陣と怒涛のアクション。瞬きもできない展開だ。農民たちの幕府への直訴は届くのか!? ラストは感動の嵐。無頼のまま散っていった魂に涙がとめどなく流れた。
時代はそんな有志が現れ、少しだけ世の中を変え、つぶされ、また現れ、つぶされ、世の中は少しずつ少しずつ変わっていく。そして現代もそうだ。時代は繰り返す。そんなことを示唆する希望のあるラストシーンにまた安堵の涙。
私の前世のひとつには革命の戦士(少年の時に殺された)というのがあって、それゆえこの物語はツボにはまってより感動したのかもしれない。が、そうじゃなくても、今の閉塞の時代にこの物語は人々の希求を描き、観た人々を必ずや癒すパワーを持っている作品と、私は確信している。
監督・脚本 入江悠
原作 垣根涼介
出演 大泉洋 堤真一 長尾謙杜 松本若菜 柄本明 北村一輝 遠藤雄弥 前野朋哉
阿見201 般若 武田梨奈 矢島健一 中村蒼 三宅弘城
※134分
※1月17日(金)から全国ロードショー