一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.146「DESTINY 鎌倉ものがたり」

本作は、スピリチュアルな事柄をエンタメにし、人を愛し、愛する喜びを教えてくれる素晴らしい作品だと思う。

あの世の描写に驚嘆驚愕しつつ
時空を越えた夫婦の愛に涙するエンタメ作!

泣けました。泣きました。

本作は時空を越えた夫婦の愛の物語でありながら、死者と生者の境界線の淡いを描いた作品で、最近頻繁にこういう作品が作られることに深い意味を感じずにいられない。
VFXを駆使したエンターテインメントは山崎貴監督の真骨頂だが、本作も素晴らしい感動娯楽作となっている。

歳若い編集者の亜紀子と結婚したミステリー作家の一色。
彼が住む鎌倉の街は妖怪や幽霊、魔物の類が人間と共存している不思議な街だ。
亜紀子も最初は驚くものの、明るくおおらかな人柄ゆえすぐに慣れ、家に取り付いた疫病神にも親切にする始末。
愛する夫とその面妖な暮らしを楽しんで受け入れる。
しかし、亜紀子を偏愛する魔物の陰謀で、亜紀子は幽体離脱したまま、身体を無くしてしまう。
霊体となった亜紀子は黄泉の国に行くことを選ぶのだが……。

 

高畑充希の演技が切実で泣かされる
胸締め付けられる妻の選択

亜紀子を演じる高畑充希がイイ‼︎ おかっぱヘアでより幼い感じに見えて、演技はドラマ「過保護のカホコ」とかぶるが……。
夫の体を気遣い、あの世へ行くことを選び、彼の寝顔を見ながら流す涙や、「今度生まれ変わってきても必ず先生を見つけるから!」というセリフの切実さに涙腺決壊! 上手いなぁ~。
彼女は出てきた時からただならぬ巧さを感じた女優だけど、今作はまさにハマリ役。
自分を犠牲にしてまだ死にたくないのに、新婚なのに、と亜紀子の無念に胸が締め付けられた。

このふたりの愛の深さを描くために、ふたりの新婚生活がもうラブラブで、未婚の私は「こんな結婚ならしてみたい」と深く思ってしまった。
クラシックな作りでコタツもあって、古い日本家屋のふたりが住む家も素敵だ。
なにか、いにしえの夫婦という感じ。
夫婦の真の姿と言っても過言ではないかも。

 

大拍手のクライマックス‼︎
それが助けてくれるの⁉︎ 驚き!

亜紀子を失った一色は、亜紀子の身体を探し出し、亜紀子をこの世に甦らせるために黄泉の国へと向かう。
さあ、この黄泉の国の描写が凄いのだ。
想像力の爆発‼︎ 楽しい遊園地みたいなのだ。
「あの世はその人が思っているように見える」とあの世の考証もしっかりされていて、「よしっ」とうなずく。
VFXの見せ所はめくるめく万華鏡のごとしで興奮する。

しかし、クライマックスで、ふたりは魔物に追い詰められる。
そこでまた亜紀子は決断を迫られる。
そのぎりぎりのところであるものが飛んでくるのだが、「はっ!」と私は不意を衝かれ驚き、また涙が溢れそうになった。
それが助けてくれるのだ。
それなのか! 見事な伏線!
それの持ち主はだって……だったものね。納得。
亜紀子の優しさがひいては自分を助けたのだ。
情けは人のためならず、である。
大拍手のクライマックスだ!

 

前世のカルマは今生で何度も繰り返す
魂を成長させるためには……?

しかし、前世からの結びつきや因縁はほんとうに今生で何度も何度も再現されているのだと改めて思う。
それは愛や憎しみも執着も。
どこかで浄化し、許し、カルマを返さないと魂の成長は望めない。
私も自身のカルマのことを考える……。

本作は、スピリチュアルな事柄をエンタメにし、人を愛し、愛する喜びを教えてくれる素晴らしい作品だと思う。
また、この世とあの世に境界線はないのだとも教えてくれる。
楽しく。その点でも秀逸である。

 

監督・脚本・VFX 山崎貴
原作:西岸良平『鎌倉ものがたり』(双葉社「月刊まんがタウン」連載)
出演 堺雅人 高畑充希 堤真一 安藤サクラ 田中泯 中村玉緒 市川実日子
ムロツヨシ 要潤 三浦友和 吉行和子 神戸浩 國村隼 他

※129分

※12月9日(土)~全国東宝系劇場にてロードショー
©2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会

 

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