一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.121 「キセキ-あの日のソビト-」

すべては円環のように仕組まれているのだな、としみじみ思わされた。

GReeeeNの誕生秘話を丁寧に映画化
人には必ず生まれてきた役目がある

GReeeeNってグループ名と歌は知っていたが、彼らが現役の歯医者で、顔や本名を公にはしていない、ということは全然知らなかった。

本作はGReeeeN誕生秘話を映画化したもので、本作で彼らのことを知った。
当代の若手人気俳優、松坂桃李菅田将暉が兄弟役を好演。

ふたりの心の動きを丁寧に描写し、安心して楽しめる秀作に仕上げたのは是枝裕和監督の下で長く助監督を務めた兼重淳。
脚本は私の大好きな斉藤ひろしだ。

さて、本作はGReeeeNファン以外にも十分見ごたえがある作品だが、スピリチュアル的にも納得させられる部分があった。

それは、生まれてきたその人なりの役目、ということだ。

本作のストーリーに少し触れる。
メタルバンドで活動しながらプロデビューを目指す兄と、医者である厳格な父親の言うとおりに医大受験に励む弟がいる。
弟も音楽好きだが、あくまで娯楽だ。

兄の活動に父親はいい顔はせず、鉄拳制裁もいとわない強権的な父親と息子たちの間には深い溝がある。
ある日兄にメジャーデビューの話が舞い込むが、プロデューサーと対立し、バンドも解散してしまう。
一方弟は歯科大に入学し、趣味で友人3人と音楽活動を始める。
その曲のアレンジを依頼された兄は、彼らの才能に驚き、プロデュースを請け負うのだが……。

 

兄は弟の歌を世に出すという役目が!
すべては生まれる前に決めてきたこと

兄は音楽で成功したい。
弟は音楽はあくまで趣味。
しかし、弟の方に才能がある。
兄は、嫉妬ももちろんあるが、弟の成功のために尽くす。

人は生まれてきた限りは、役目や使命が必ずある。
この兄の役目は弟を、弟たちの歌を世に出すことだったんだなあ。
そのためにこの家に生まれ、音楽活動をやり、プロデューサーと知り合ったのだ。

すべては弟のため、そして、弟のサポートを続けるため。

現在も兄のJINさんはGReeeeNのプロデューサーを務めながら自身も音楽活動をしているそうだ。

表層だけ見ると皮肉な展開だが、それは全て各人が生まれる前に決めてきたことで、より学びを深くするために考え抜かれた設定なのだ。
だから、長い目で見て俯瞰しないと今起こってることにどんな意味があるのかすぐには分からない。
でも、必ず上手く行ってるのだ! と思うことが大切である。
また、ジタバタしないことも。

すべては上手く行くのだから。

 

必ず上手く行っていると信じて
この世は円環のように仕組まれている

改めて生まれてきた役割について考えさせられ、自身の過ごしてきた日々に思いを馳せることができた。
ちゃんと決めてきた通りになっている。しかし、ここに来て、迷いが……。

電車を間違えたり、道に迷ったりする夢を最近何度も見る。
少し、自身の内面と話をしないと……そんな気づきを与えてくれる作品でもあった。

さて、最後に映画についてもう一言。
息子たちを抑圧し続ける父親の役割もここでは重要。

抑圧続けたからこそ、兄は音楽を止めなかったのだろう。
そして、そんな父親が次第に変化していくきっかけとなった患者とのエピソードも秀逸だった。

すべては円環のように仕組まれているのだな、としみじみ思わされた。

 

監督 兼重淳
脚本 斉藤ひろし
出演 松坂桃李 菅田将暉 忽那汐里 平祐奈 麻生祐未 小林薫 横浜流星
成田凌 杉野遥亮 野間口徹 奥野瑛太 早織
112分

※1月28日(土)~全国ロードショー

©2017「キセキ ーあの日のソビトー」製作委員会

 

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