一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.111 「青空エール」

きっと多くの人が素直に涙できる、いや、涙して部活大国の日本人が元気になってほしい!  エールを送られる一作である。

十代の部活に賭けた青春物語
これを観て元気になろう、日本人!!

部活動というのは世界でも珍しいという。しかも、プロを目指すくらいの鍛錬をし、情熱を傾ける部活動というのは日本くらいらしい。

学校の授業が終わってまで、教師も生徒も力を入れる活動なんて、外国からしたらまったく信じられないことなんだろう(特に欧米)。しかし、日本は部活を通し、自分の進むべき道を見つける生徒が少なくない。また、部活を通して人間関係や努力や忍耐、日々の積み重ねが自分に何をもたらすか? という後の人生での重要なことを学ぶ場になっている。いわば、修行の場なのだ。

だから部活には必然的に「ドラマ」がある。日本には多数の優れた部活ものの作品があるゆえんだろう。そして、本作は間違いなく、近年の部活を舞台にした映画の中でも優れた作品だと言える。

十代の彼らが頑張り、迷い、挫折し、泣き、やり遂げる姿に涙が止まらなかった。彼らの3年間に寄り添ったような、至福の2時間だった。

サブ㈰

 

野球とトランペットで頑張る
昭和な主役ふたりの好感度大!!

お話は部活の花形のような野球部と吹奏楽部が舞台だ。

野球と吹奏楽で有名な高校へ入学してきた野球少年とトランペット初心者の少女。彼らは出会いから好意を持ち、互いに甲子園、吹奏楽の全国大会と明確な目標を掲げ励ましあいながら奮闘する。3年間、山あり谷ありの展開で、問題の度にふたりは成長し、こちらはポロポロ泣かされる。

サブ㈬

 

なんで、こんなに泣けるんだろう? と考えたが、まずは主役ふたりの清潔さ、純潔さだろう。ヒロインの土屋太鳳、やっとハマリ役に出会ったという感じ。イジイジして地味な少女役だが、真の強さと魂の綺麗さで周りを変えていく。土屋の今風ではない、真面目で優等生的な容姿がこの役にピッタリ!

そして高校球児役の竹内涼真。ほんとに高校の野球部にいそうなルックス。さわやか。初めて映像で観たが、昭和な匂いがした。そう、ふたりとも昔懐かしい雰囲気があったのだ。それは、周りの友人たちもそうで、ちゃんと「高校生」なのだ。きちんと制服を着て、髪も黒く、化粧もしてなくて、幼い。

好感が持てること。それは感動させる大事な要素だと思う。人は好感を持った登場人物には感情移入する。

サブ㈫

 

人は老いても死ぬまで「青春」
心の底の「子どもの心」を忘れないで!

感動するシーンは多数あれど、中でも私が感動したのは、怪我をした少年を励まそうと少女の発案で吹奏楽部全員で少年一人のためだけに曲を演奏するシーン。文句を言う部員もいる中、顧問の教師が「落ちこんでる一人も元気づけられなくて、全国大会で多くの人の心を動かせられる?」と言い放つ一言も素晴らしい。演じる上野樹里も堂々顧問役で随所で特筆の演技を見せてくれる(指揮のシーンも指導シーンも冷静でカッコよく、衣装も素敵だった!!)。

これは、泣く。俺だけのために、吹奏楽部全員が!? 音楽の力と人の優しさを見せ付けられた名シーンだった。

サブ㈭

 

こういう、若者の頑張る姿というのは、ほんとうに見てて清々しいものだ。
「青春」なのだが、人間は死ぬまで「青春」でいていいと思う。老いても私たちの心の底には幼い子ども(インナー・チャイルド)がいるし、青臭さはいつまでも必要ではないか。涙にむせびながら、そんなことを強く思った。

きっと多くの人が素直に涙できる、いや、涙して部活大国の日本人が元気になってほしい!
エールを送られる一作である。

サブ㈪

 

■監督 三木孝浩
■原作 河原和音
■脚本 持地佑季子
■出演 土屋太鳳 竹内涼真 上野樹里 志田未来 葉山奨之 堀井新太 小島藤子 松井愛莉 平祐奈
■125分

※2016年8月20日(土)全国東宝系公開

(C)2016 映画「青空エール」製作委員会
(C)河原和音/集英社

 

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