一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.108 「ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~」

こんな人間関係を築けることはこれからもないと思う。映画や本で見て感動するか、うっとおしく思うかだろう。

仲間の遺体を回収するための遠征隊
濃い人間関係で描く感動の人間賛歌!

これ、実話なんです。
エベレストで死んだ後輩の遺体を捜して家族の元へ戻す、それだけのために遠征隊を組んで死を覚悟してヒマラヤへ向かったかつての仲間たち。そんな無謀なことをする登山家って、たぶん、韓国の登山家だけだよね、と心底思った作品だった。

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普通、登山途中で亡くなった人の遺体って下ろすことができない。だから、そこに置いてくるのが登山の常識らしいんだけど、そりゃそうだわね。下ろしてたら生きてる人の命も危うくなるし、ヘリで下ろすのもお金がかかるし、涙を呑んで置いてくるしかないよね。

でも、韓国人は行っちゃうんである。本作は韓国人の濃すぎる「情」と「無謀」さを改めて知るとともに、それらが今の日本人にも必要なのではないか? と思わせられた。また、それらのものを持つ韓国人がちょっと羨ましくもあったのだ。
だから、私は本作で号泣した。いやもう、泣くしかない映画なんである。

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山あり谷ありのドラマ展開にどっぷりっ
号泣しすぎて画面が見えんかったよ!

実話なのに、山あり、谷ありの素晴らしいドラマ構成には感心させられた。
最初に、仲間の遺体を回収しようとして凍死寸前になる大学の山岳部の青年が登場し「お前はアホか!」とベテランの登山家に罵倒されるシーンがある。この青年が後にエベレストで遭難し、彼の遺体を捜しにいくのがベテラン登山家なのである。彼らは最初の出会いから友情を築き、二人で数々の難所の登攀を成し遂げる。しかし、ベテラン登山家は足の不調で現役を引退する。納得がいかない青年は初の隊長としてエベレストに挑むが、そこで悲劇が起こる。

ベテラン登山家は、かつて仲間の遺体を回収しようとした青年を罵倒したのに、今度は自分が青年と同じことをしようとする。当然皆に驚かれ、協力も拒否される。しかたなく、一人で向かおうとするのだが……。

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もう、ここで涙腺決壊でしたわ。皆、かつての仲間は新しい仕事先が決まってたり、もう山に登りたくなかったりと、それぞれの生活と事情があるのだ。当然だわね。死ぬかもしれんのだし、遺体回収だけの記録にも残らない危険な登攀だ。
しかし、しかし! 彼らは決心してくれるのだ! うおーっ泣けたゾ!!

そして、やはり登攀は悪天候との闘いで危険を極める。しかも、遭難した場所はエベレスト頂上から100メートル下っただけの8,750メートル地点。デスゾーンと呼ばれる難所だ。それでも強行登攀をし無事遺体を見つけたのだが、なんと、70キロの遺体が凍り付いて100キロになっていて、せっかく見つけたのに、遺体を運搬しての下山は不可能となる。ここでまたも涙腺決壊!! ええーっ! やっと、やっと見つけたのに、下ろせないって!! そんな酷いことあるか!? なんのために来たんやよ!! もうもう泣くしかないんである。うぐぐずるるっ……。
ここからは涙を拭くのと画面を観るのとで大変だった。涙で画面が見えんかったよ……。

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こういう作品を観る事の大切さ
人生に必要なことのひとつ

息詰まる展開、エンターテインメントと言ってもいい演出と感動にどっぷり浸れた。本格的な山岳映画は本作が韓国で初めてというが、登山シーンもなんら遜色のない素晴らしいリアルさ! 実際にエベレストでも撮影しているそうだが、俳優も登山の特訓を重ね、荷物も自らかついで3日歩いて撮影場所に登ったという。その意気込みや熱意はしっかり映像の中に写し込まれている。

しかし、こういう「必ず迎えに行く!」という強い結びつきの人間関係ってどうやれば築けるんだろう、と思う。たぶん、「死」に近い部分を共有しなければ難しいんだろうな。私自身は人間関係にクールな部分がある人で、基本的には個人主義のマイペースな人だ。だから、こんな人間関係を築けることはこれからもないと思う。映画や本で見て感動するか、うっとおしく思うかだろう。

しかし、そういう人間関係を見るということは、人生にとても必要だ。
人間って素晴らしいな、と思えるからだ。

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■監督・脚色 イ・ソクフン
■脚本 スオ、ミン・ジウン
■出演 ファン・ジョンミン チョンウ チョ・ソンハ キム・イングォン ラ・ミラン チョン・ユミ
■124分

★『ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~』
7月30日(土)より、シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋ほかにて全国公開!
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