恐れられる神から福の神まで、神となった人たち

偉大な業績を残した人だけでなく、ここしばらく続いているゆるキャラブームや、ご当地ヒーローブームなどを見ていると、我々日本人は「様々なものに神性を見いだすことが得意な民族」といえると思いませんか?

【福を呼ぶ神様になった人たち】

その一方で、高貴な血筋でなく、偉人でもないにも関わらず神様になった人もいます。こちらは神社に祀られているわけではありませんが、その神様とは「福助」。現在でも「商標として使っている会社」が存在しますし、「福助人形も製造されています」ので、名前は知らなくてもその姿を見たことがある人は多いかも知れません。

その姿は裃をつけて、大きな頭にちょんまげを結い、正座をして頭を下げている。というもので、「チャームポイントは大きな頭と大きな福耳」です。現代のゆるキャラにも通じるかわいらしさを持つ福助ですが、元々は江戸時代に流行した福の神なのです。当時、「願いを叶える存在」として一躍人気となり、置物だけでなく浮世絵にも登場しました。

 

【障害をもっていたが負けずに福を招き寄せた福助】

なぜ、福助が福の神になったのかには諸説あるのですが、「身体に障害をもち、頭が大きく身長が低かった男性がモデルになった」ことは確かです。彼がその身体にもかかわらず、勤勉に働いてお店を大いに繁盛させたというものと、その姿を見世物にしていたところ、武家にひろわれて、その後、その家がとても繁栄したというものが有名です。江戸時代頃の話なので、モデルとなった人物は定かではないのですが、少なくともなんらかの形で福をもたらしたということで話題なって、いつしか現代にまで残る福の神になったわけです。

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【写真も残っている明治時代の福の神】

そんな「福助の後輩」ともいえる福の神も存在しています。こちらは、「明治時代のことですので、人物も特定されていますし、なんと写真も残っているのです。そんな福の神とは「仙台四郎」。本名は「芳賀四郎」という明治時代に実在していた人物です。仙台に住んでいたために、このような異名がつきました。

彼は幼い頃に、川に落ちたことがきっかけで、「脳に障害」をおってしまい、町を徘徊するようになりました。現代だと施設に収容されてしまいそうですが、「常に笑顔を浮かべて人当たりがよかった」ことと、当時の社会環境もあり、周りの人から好かれていたのだそうです。そんな中で、いつしか、「四郎が立ち寄ったお店は繁盛する」という噂が流れ始めました。

これは、噂だけでなく、実際にお店が繁盛するようになったという記録がいくつも残っているのだそうです。これを利用して、無理矢理、四郎をお店に連れて行こうとした人もいたようですが、そういった場合や、なにか下心があるようなお店には決して立ち寄らなかったということですので、「繁盛するお店が持つなにかを敏感に感じ取っていた」のかもしれません。

 

【偉人でないからこそ、福を呼んだ?】

福助も仙台四郎も、どちらも「優しい笑顔を浮かべて福を招いてくれる神様」として、神社などはないものの、今でも多くの人から信仰を集めています。菅原道真をはじめとした、神社に祀られるような人物は、英雄や偉人だったのに比べると、むしろ普通よりも劣った部分がある福助や、仙台四郎も神様になっているというのは興味深いところです。一般的ななにかが欠けたために、彼らは「物事の本質を見抜くような力」をもっていたのかもしれません。

偉大な業績を残した人だけでなく、「小さな幸せをあちこちでもたらしたことから神様になれる」、そんな文化は明治時代を最後に消えてしまったかのように思えますが、ここしばらく続いているゆるキャラブームや、ご当地ヒーローブームなどを見ていると、それは形を変えて、私たち日本人の精神に脈々と流れ続けているのかもしれません。

 

People who became God.
God of Luck persons with disabilities.