第三章 光る源氏の物語
第二段 読書始め(七歳)
この頃、若宮は内裏に仕えていらっしゃいました。七つになってからは、読書始めなどをされ、世に秀でて聡明でいらっしゃって、たくさんの難しい書をご覧あそばされていました。
帝が、「いまは誰かれ問わず若宮を憎まぬよう。母君を亡くしていることだけでもかわいそうだと思ってあげなさい」と、弘徽殿などにも一緒に行かれていました。
そのようにしておられるうちに、弘徽殿の女御は、御簾(みす)の内側に、若君を入れて差し上げられたのです。
なみなみならぬ武士や仇敵であっても、こと若君を見ては笑みをこぼさずにはいられず、放ってはおけないご様子でした。
女御には皇女がお二人おられましたが、若宮の美しさとは比べようがありませんでした。
他のお方々もお隠れせず、若宮を前に、艶めかしく恥ずかしげにされていました。
とても趣のある打ち解けられないお遊びの種でしたので、誰もかれもがお慕い申し上げていました。
若宮は、本格的な学問はさることながら、琴笛の音においても宮中の人々をもてなされていました。
若宮のすべてにおいて言い続けますと、何かにつけて、唄い手のごとく、人を心地よくさせるお人柄だったのです。
(画像出典:Wikipedia)