地球にいる鳥類は約1万種と、動物の中で最多であり、人間にとって大変身近な存在です。鳥類の特徴のひとつは、翼を持つということ。鳥の多くがその翼を使い、大空を飛ぶことができます。空を飛べない人間にとって、古来、鳥が自由に空を舞う姿は憧憬であり、神秘的なものでもありました。
例えば、辛い思いを噛みしめているときに空を悠々と舞う鳥を見て、「自分も、あの鳥になりたい」と思ったことはなかったでしょうか。
古くから行われた「鳥卜占」
そうした鳥達の軽やかな動きに惹かれ、古代メソポタミアの人々は、鳥を観察して未来を予兆する「鳥卜占(とりぼくせん)」を行っていました。その後も鳥卜占は途切れることなく引き継がれ、行う地域もかなりの広がりを見せ、ギリシャやローマでも盛んだったようです。古代の人々は、自由闊達に高く舞う鳥達に、神の姿を見出していたのかもしれません。
神話に多数登場する、神格化された鳥達
人間に神秘性を見出された鳥達は、世界中の神話、民話、昔話に数多く登場します。それらの中で、鳥が非常に高い存在として神格化されたものが、複数見受けられます。その代表的なものを、5種類紹介しましょう。
★天空神ホルス・太陽神ラー
エジプトでは神々が動物の頭をつけて登場しますが、天空神ホルスと太陽神ラーは、ハヤブサの頭を持っています。似た姿を持つこの2神は、同一視されることもあります。
特にホルスは天空に広がる巨大なハヤブサであり、左目が太陽で、右目が月であるとも、もしくは左右逆であるともいわれています。(偶然か意図的か、日本神話のイザナギノミコトが左目を洗うと太陽神のアマテラスが、右目を洗うと月神のツクヨミが生まれたこととリンクしています。)
ホルスはエジプト神話の中で、太陽と月という重要天体を司る、非常に重要な神として君臨しているのです。

ハヤブサは、鷹狩りにも使われる、猛禽類の中でも強靭な鳥です。世界最速といわれる飛行速度を持ち、特に落下速度は時速300キロを超えるそうです。そんな天高くスピーディーに飛ぶハヤブサを見て、古代の人々は崇高な神をイメージしたのでしょう。
★フェニックス
フェニックスは、日本では不死鳥、火の鳥と呼ばれています。死んでも蘇ることで永遠に生きる伝説上の鳥で、金色と赤で彩られた羽毛を持つとされています。
エジプト神話に登場する「聖なる鳥ベンヌ」が、フェニックスの原型です。ベンヌは太陽神ラーの使いであり、沈んでは昇る太陽の象徴でした。その後、主に古代ギリシャや古代ローマの著述家によって、次第にフェニックスの姿は変化していきました。
死んだ後に復活するフェニックスは、キリストのイメージとかぶり、キリストの復活を象徴するものとなりました。また、不死という縁起の良さから、古代ローマ帝国では繁栄の象徴となり、フェニックスの姿がコインなどに取り入れられました。生命力の強さをイメージするフェニックスは、現代の日本でも保険会社の商品名の他、さまざまな紋章に使用されているようです。
★鳳凰(ほうおう)
鳳凰は、中国神話で「神の鳥」とされ伝説上の霊鳥です。中国で最も縁起の良い鳥であり、鳳凰が現れれば、天下安泰となるといわれています。さまざまな説がありますが、古くから前は鴻(おおとり)、後ろが麒麟、首が蛇、背が亀、くちばしが鶏でできている鳥とされ、色は豪華絢爛な五色とされています。
鳳凰は、中国から日本に伝わりました。日本では旧一万円札にも描かれている、平等院鳳凰堂の屋上にある鳳凰像が有名ですね。
★八咫烏(やたがらす)
八咫烏は、日本神話に登場する神の使いのカラスであり、導きの神です。神武天皇に遣われ、熊野国から大和国への道案内をしたとされています。

現在は3本足の姿で知られていますが、『古事記』と『日本書紀』に、八咫烏が3本足であるとは記述されていません。平安時代の文献に、八咫烏が3本足であるという記載があり、この頃から中国や朝鮮の伝説の鳥「三足烏(さんそくう)」と同一視され、3本足になったと考えられています。日本サッカー協会のシンボルマークとしても有名です。足が3本もあると、サッカーも上手にできそうですね。
★サンダーバード
アメリカの先住民族であるインディアンの間に伝わる、伝説上の鳥です。鷲に似た巨大な鳥で、自在に雷を落とせる雷の精霊であり、獲物も雷で仕留めるといわれています。実際に見た記録はありませんが、トーテムポール上にその姿が彫られているようです。
神聖な扱いをされることが多い鳥達
神聖化された鳥を5種類紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。高い天が神の世界であることを示すように、上空を自由自在に飛び回る鳥は、神聖な力を持っていたり、神の使いだったりすると考えられたのですね。
このような縁起の良い鳥達の存在に、もっと強く目を向けてみることをお勧めします。それによって、神の世界にあなたの意識が近づくかもしれません。
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