一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.87「ガールズ・ステップ」

いや、泣かされました。話はよくあるものだし、パターンそのままなんだけど、なんでこんな泣かされたんだろう?キャラクターがしっかり作りこまれていて、ダンス選手権という目標があり、何よりも微妙な感情が丁寧に描かれている。

 

心に「傷」あり女子高校生5人が
ダンスで成長、輝く感動青春映画!!

最近の中学生、高校生は大変なんだな。
シリアスな感情が描かれた学園物を見るたびにそう思う。
また、数々の事件が報道されていて、そう思いがちになる。
しかし、電車の中で見かける中高校生は大抵お気楽そうにみえる。たまに、いやあな接し方を友だちにしている男子学生を見るが、たまにだ。
きっと、大半は無事に楽しく学園生活を送れているんだと思う。みんな上手く立ち回って。まあ、上手く立ち回らないとやっていけないのかもしれないけど。

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本作の主人公あずさは、かつてイジメにあった経験からみんなにいい顔をしようとして、なんとか今の派手な仲良しグループに属している。しかし、実際は軽く見られていてパシリ的な存在だ。そんな彼女がクラスで浮きまくっている女子たちとダンスグループを組むことに。
根暗、勘違い、ガリ勉、ヤンキーと、あずさとしては関わりたくないメンバーだったが、彼女たちは実に「人間味」溢れる少女たちで、あずさはこのそれぞれに「傷」を持った少女たちとダンスを通して無二の親友になっていく。
そして、あずさ自身の問題も解決していくのである。

いや、泣かされました。
話はよくあるものだし、パターンそのままなんだけど、なんでこんな泣かされたんだろう? と考えてみた。
それはキャラクターがしっかり作りこまれているのと、ダンス選手権という目標に向かう、ということ。
そして、微妙な感情が丁寧に描かれていることだろう。

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お気楽少女の裏の顔に泣かされる
健気な大人の少女は涙腺決壊ポイント!

特にあずさがなかなか派手なグループから抜け出せず、ダンスのメンバーを裏切ってしまい、みんなが離れていくシーンが大きな見所だ。皆が離れていってもあずさは踏ん切りがつかず、派手なグループで行動する。なかなかあずさ自身が自分の愚かさに気づけない。いつまでもウジウジ逡巡してしまう。
そこで、一番問題の無さそうな勘違い女子、葉月に偶然町で出会う。葉月はいつもお気楽そうに見えて、実は両親の代わりに幼い妹弟とともに弁当を売る健気な勤労女子で、あずさを責めることなく別れを告げる。
ここ、演じる小野花梨の自然さもあって、号泣!
こういう「実は……」という裏の顔が見えて、大人な少女の姿にはいつも私は泣かされる。

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あずさの迷いが長いのにちょっとイラッとするが、長いほど後の感動は強くなる。そしてクラスマックスのダンス選手権のシーン! もともと踊れるのはあずさ役の石井杏奈(E-girlsメンバー)だけで、他のメンバーは劇中の少女たちと同じくダンス初心者。特訓を重ねての本番だったそう。本番前までステップを間違えていたメンバーもいたそうだが、なんと、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれる。
これは、そのまま実際の役者たちの喜びが登場人物とリンクした稀有なシーンになっていて、感動と驚きのすがすがしいシーンだった。

その後の海岸でのシーンも泣かされる。
女同士の友情は一旦結ばれると強固である。こちらも嬉しくなってしまった。

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うまく立ち回ることだけで青春を
浪費することなかれ、若い幼い人たちよ!

うまく立ち回ることに無理が生じたあずさの決意と成長に共感する人は少なくないと思う。
でも、他人に嘘は簡単につけるけど、自分に嘘をつくとゆくゆくはとても辛くなってしまう。そのことをあずさは教えてくれる。
どうぞ、今の学生たち、若い幼い人が、うまく立ち回ることだけが上手くなってそれだけで輝く日々を終えてしまわないように。
彼らが自分自身に正直に生きられる学生生活であることを、切に祈る。
若い幼い人はかつての私たち自身なのだから。

青春映画は好きだ。
とても、学ぶところがある。キラキラしている。不器用だ。無様でさえある。
青春時代というものを過ぎてだいぶたってから、青春というものは理解できるのだと思う。

少女たちが一番美しい時の輝きを魅せてくれる一作!

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■公開日 9月12日(土)全国ROADSHOW
■監督 川村泰祐
■原作 宇山佳佑 『ガールズ・ステップ』集英社文庫
■脚本 江頭美智留
■出演 石井杏奈 小芝風花 小野花梨 秋月三佳 上原実矩 磯村勇斗 大東駿介(友情出演) 塚本高史 音月桂 山本裕典
■114分

■主題歌:GENERATIONS from EXILE TRIBE 『ALL FOR YOU』
■コピーライト
©宇山佳佑/集英社 ©2015「ガールズ・ステップ」製作委員会

 

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