「西洋では悪魔、日本では勝ちをもたらす縁起の良い虫とは?」

トンボの英語名称は「Dragonfly」。これは当然ながら「ドラゴン=竜」のイメージがベースとなっています。西洋では多くの「ドラゴンが邪悪な存在」とされているために、トンボも「悪魔的な存在であり、世の中に災いをもたらす」 といわれているのですが、実は日本では全く逆の意味合いとなっているのです。

 【秋の風物詩ともいえる昆虫】

8月も後半に入り、少しずつですが秋の気配を感じられる日も増えてきたように思えます。そんな「秋の風物詩」ともいえる昆虫といえば、多くの人が「トンボ」を思い浮かべるのではないでしょうか。

 

【日本を象徴するトンボ】

トンボは世界中に分布している昆虫ですが、日本では古くから「特別な虫」だと考えられてきました。トンボにはいくつかの別名がありますが、古来「秋津(あきつ)」と呼ばれていたことがあります。

日本の別名として「秋津島」というものがありますが、これは「神武天皇」が「日本の姿を見て、トンボのようだといった」ところから来ているという説があるのです。

トンボは天皇と縁が深かったのか、『古事記』には「雄略天皇」の腕をかんだアブをトンボがくわえて飛び去ったというエピソードが残されており、そこでも日本とトンボの関わりをあらわした歌が残っています。

 

【勝利をもたらすトンボ】

このように、日本と同一視されるトンボですが、その飛び方が「一直線に前に進んでいくように見える」ことと、基本的に肉食で害虫を食べるところなどから、縁起が良いとして「勝虫」などとも呼ばれていました。この名称は勝負事にこだわる武士たちの間で、かなり流行したようで、トンボをモチーフにした兜などが多く作られたのです。

また、勝虫のイメージとはちょっと異なりますが、トンボが姿を現す時期が「旧盆」に近いことから、赤とんぼは「ご先祖様を送り迎えする使い」であるとしたり、ハグロトンボと呼ばれる全身真っ黒のトンボは、「ご先祖様の魂が姿を変えたもの」であるとも考えられてました。ハグロトンボに関しては、一部の地域では「カミサマトンボ」と呼び、「田の神の化身」であるという考え方もあったようです。

 

【日本と海外でまったく違うトンボのイメージ】

昆虫の中でもスピードが速く、空を自在に飛び回るトンボの姿から、人々は「勝負に挑む英雄の姿」や、「自宅へと帰りを急ぐ先祖の姿」をイメージしていたのかもしれません。しかしながら、日本ではいいイメージしかないトンボですが、海外にわたるとそのイメージが、がらっとかわってしまいます。

トンボの英語名称は「Dragonfly」。これは当然ながら「ドラゴン=竜」のイメージがベースとなっています。このあたりは、勇猛果敢な虫という意味では日本と共通しているのですが、西洋では多くの「ドラゴンが邪悪な存在」とされているために、トンボも「悪魔的な存在であり、世の中に災いをもたらす」といわれているのです。

また、日本では国土と同一視されたその姿が、西洋では針のように見えることから「魔女の針」「悪魔の針」などという別名もあります。こちらは、「言うことを聞かない子供の口を縫い付けてしまう」といった役割を持たされていますので、西洋の子供たちにとって、トンボはちょっと怖い存在なのかもしれません。

 

【トンボは日本の国土とつながった昆虫】

場所がかわることで、神聖なものが悪魔的なものに変わるということは比較的よくありますが、トンボの場合は、日本という国土と、とても密接に繋がっていることが、そのスピリチュアルな性質を決定しているように感じられます。

これから、よくトンボをみかけるようになると思いますが、そんなときは、トンボが持つ臆せずに勝負に挑み、そして、勝利を手に入れることのできるパワーを受け取るように意識してみてください。

Insect which leads to victory.
Dragonfly is connected with Japan.