スピリチュアルな災害マニュアルを伝えた存在『白澤図』とは

現在でも残っているものとしては、世界遺産でもある「日光東照宮」の拝殿に描かれている白澤があります。こちらは、将軍が座る場所のすぐ裏に書かれているということもあり、江戸時代頃まで、「白澤の霊力が信じられていた」ことがわかります。

出典:www.miho.or.jp

【世界最古の災害マニュアル】

「災害マニュアル」というのは、有事の際に重要なものです。9月に「東京都」が様々な危機的状況に陥った時の対処方法を解説した「東京防災」というマニュアルを発行しました。こちらは、PDFでも提供されており、誰でも無料で読む(http://www.bousai.metro.tokyo.jp/book/)ことができます。

「300ページ以上にも及ぶこのマニュアル」には、自然災害だけでなく、「テロや武力攻撃、感染症の大規模流行」といったものにまで対処する方法が紹介されています。また、サバイバルマニュアルとしての側面もあり、「もしもマニュアル」という章では、怪我の応急処置にはじまり、簡易トイレの作り方、簡易ランタンやコンロの作り方なども知ることができますので、配布されている東京都に住んでいなくても、スマホなどにPDF版をダウンロードしておくことをオススメします。

このように、何かあったときのマニュアルというのは災害だけでなく、色々な状況で用意されておくものですが、今から「4000年以上前」に、「世界最古ともいえる災害マニュアル」が存在していました。

 

【4000年前災いは鬼神や妖怪がもたらすと考えられていた】

この当時は、災害や病気などは、「鬼神や疫神などによって引き起こされる」と考えられていました。これらは、日本で言うところの、「妖怪的なもの」です。つまり、現在よりも「スピリチュアルな世界と現実世界が近かった」といえるわけです。そんな中で、なんと「11520種類」にも及ぶ鬼神などのプロフィール及び、それらへの対象方法が書かれたものが『白澤図』であり、前述した災害マニュアルとなります。

白澤図

【1万種類以上の対処法が書かれた白澤図】

こちらは、中国の伝説上の皇帝である「黄帝」が「白澤」という神獣に出会ったときに、白澤が語ったものを部下に書き取らせたものをまとめたものだといわれています。1万以上に及ぶ「霊的な災害及び疫病や、天災などへの対処が書かれている」ということもあり、まさに万能の災害マニュアルだったのですが、残念ながら現存はしていません。

その代わりというわけではないのですが、神獣である白澤の姿を描いたものが、「白澤図」と呼ばれるようになり、中国や日本で「厄除け、災害避け、病避けのお守り」として使われるようになりました。

 

【統治者に好まれた神獣白澤】

今ではあまりポピュラーではないのですが、白澤は単なる神獣ではなく、黄帝のような「徳の高い為政者の前に姿を現す存在」である、「瑞獣」と考えられていました。すなわち白澤が現れてくれれば、国が安定するだけでなく、自らが「理想的な統治者だと認められた」ことになるわけですので、地位のある人物は建造物などに白澤の図や彫刻を多く残しています。

現在でも残っているものとしては、世界遺産でもある「日光東照宮」の拝殿に描かれている白澤があります。こちらは、将軍が座る場所のすぐ裏に書かれているということもあり、江戸時代頃まで、「白澤の霊力が信じられていた」ことがわかります。

この白澤への信仰は、権力者だけでなく一般人までにも伝わっており、現存している白澤図の多くが江戸時代頃のものとなっています。この時期にはある程度の印刷技術が進歩したという理由もありますが、比較的平和な時代であった江戸時代に、疫病を避け、道中の災難から逃れために、多くの人が「お守り」として身につけていたようです。

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出典:izucul.cocolog-nifty.com

 

【神社でも配られた万能のお守り白澤図】

白澤は、ほぼすべての鬼神や妖怪を熟知していたために、「悪夢避けのお守り」ともなっていたようで、本来の災害マニュアルは失われてしまっても、その姿だけは「万能のお守り」として活用されており、今のように神社やお寺の職分がはっきりと分けられるようになるまでは、神社やお寺でも白澤の姿を書いたものが護符として販売されてました。

実際に、パワースポットとしても有名な長野県にある「戸隠神社」の神職が、土蔵の片隅から「白澤避怪図」というお守りを刷るための「版木」を見つけたことがあります。こちらは、「赤い蛇があらわれたり、鶏が夜に鳴いたり」といった普段起こらないような「凶兆が起きた時」に、この護符をつかうことで、「凶を福に変えるという力がある」とされていたようです。

これだけ様々な効果があり、国家のトップから庶民にいたるまで信仰されてきた白澤信仰が、なぜ現代ではほとんど見られなくなってしまったのかは謎ですが、非常に人気があったこともあり、東照宮の例はもちろん、日本全国に白澤の図は残っていますので、どこかで見かけたら、その御利益を感じてみて下さい。

The world’s oldest disaster manuals.
Amulet of the god beast.