【ビールにつきものの薬用ハーブ】
「ホップ」という植物があります。日本語にすると「セイヨウカラハナソウ」。「食欲増進、消化促進」といった身体的効能や、「鎮静作用」といった精神的効能のある薬用ハーブとしても使われますが、最も多く活用されているのは「ビールの香り付け」。
【ホップがないとビールではない?】
世界的に有名なビールの生産国である「ドイツ」では、ビールには「大麦・ホップ・水」意外の原料を使用してはいけないという「ビール純粋令」という法律が制定されています。こちらは1516年に制定されたものであり、それからしばらくたってこの3種類に「酵母」が加わったものが、現在でも世界各国で「ビールの定義」とされているのです。
今から500年以上前から、ビールにはホップがつきものだったわけですが、紀元前にビールが発明された時にはホップは入っていませんでした。単純に大麦を水につけただけのどちらかというと粗野な飲み物だったビールに、ホップが加わったのは、「幻視者」「聖女」「女預言者」「中世ヨーロッパ最大の賢女」と呼ばれる人物が関係していたのです。
【万能の聖女 ヒルデガルド】
その人物は「ヒルデガルト・フォン・ビンゲン」。12世紀の修道女でありながら、医学と薬草学に精通し、作家であり、言語学者、詩人、さらには歴史的最初期の女性作曲家であり、神秘家という、賢女の名前にふさわしい、まさに「万能の天才」といえる人物でした。
彼女は幼い頃から「幻視体験」をしていましたが、宗教的な幻視にありがちなトランス状態によるものではなく、意識がしっかりした状態で受け取る「ヴィジョン」であったと表現しています。その能力をいかして、自らのヴィジョンを具現化した絵を描いたり、天上の旋律を感得して音楽を制作し、さらには「リングア・イグノタ」というスピリチュアルな意味合いを持つ独自の言語まで産み出しました。
そのようなスピリチュアルな活動をする一方で、「ドイツ薬草学の祖」といわれるほど医学や薬草学に精通していました。その知識は動物や鉱物にも及び『素朴療法の書あるいは自然学』という全9巻に及ぶ大著にまとめられています。修道女というよりも、現代でいうところの「魔女」のようなヒルデガルドですが、ビールを長持ちさせるために「ホップ」を混ぜるということを、「歴史上初めて考え出した」とされています。その一方で、彼女はホップは薬草として使うと「人を憂鬱にして、悲しい気分にさせる」と説明しています。
【ホップが心身に与える効果が次々と明らかに!】
ちなみに、前述したように、ホップには中枢神経に働きかける沈静化作用があり、そこに含まれている「フムロン」には不眠などを解消してくれる鎮痛作用があることもわかっています。しかしながら、その鎮静作用は強すぎるために、「鬱の傾向がある人は摂取を控えるように」ともいわれているのです。