「ビートルズに影響を与え世界初のコンセプトアルバムを産み出したLSD」〜ビートルズとスピリチュアルな世界 その2〜

音楽というのは、本来宗教的なものだったわけですので、ビートルズの音楽が世界的に受け入れられたのは、人々の集合的意識に影響を与える要素が含まれていたのかもしれません。

【初めてコンセプトアルバムを作ったビートルズ】

「コンセプトアルバム」というものをご存じでしょうか? 「トータルアルバム」などと呼ばれることもありますが、要するに音楽アルバムに含まれた楽曲がすべて一定のテーマ、もしくは物語にそって構成されているものを指します。

そんな「コンセプトアルバムを初めて作ったといわれているのが、ビートルズ」であり、そのアルバムは『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』だとされています。多くの伝説を持つビートルズ、その偉業ひとつですが、このアルバムに含まれた楽曲に強い影響を与えたのが「LSD」でした。

 

【古くて新しい幻覚剤】

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LSDとは「LYSERGIC ACID DIETHYLAMIDE(リゼルグ酸ジエチルアミド)」という物質の略称。麦角のアルカロイドを研究している過程で発見された物質であり、呼吸促進作用などを見込んで合成されたのですが、その効果は実現せず、予想外に「幻覚作用を有している」ことがわかりました。

現在では世界的に「違法薬物として知られているLSD」ですが、覚醒剤などに比べて中毒性や依存性がなく、純粋に幻覚を引き起こす薬物とされています。LSDを合成するために、アサガオの種などを利用することが可能ということからもわかるように、古来から「シャーマンが使っていた幻覚植物とほぼ同じ効力をもつもの」です。

ある意味で、非常に古典的なものですが、実はその作用は明らかになっていません。LSDを使用した被験者をMRIにかけて、脳の活動部位を確認したところ、「顕在意識の領域をカットすることで、無意識の領域から幻覚を引き出している可能性が高い」ことはわかっています。

現在では違法薬物ですが、「ビートルズが活躍していた時期は合法」であり、「全メンバーがLSDを体験」していました。特に、ジョン・レノンはLSDによる幻覚から強いインスピレーションを受けていたとされており、前回紹介した超越瞑想から離れたのは、LSDの方を好んだためともいわれています。

 

【あの天才もLSDからインスピレーションを受け取っていた】

画像提供・ウィキペディア

スティーブ・ジョブズ氏(画像提供・ウィキペディア)

 

幻覚を見ることでなにを得られるの? と思うかもしれませんが、古来から「シャーマンが幻覚剤を使って異なる世界にアクセスしていた」ことからもわかるように、通常では気づかなかった領域の情報を受け取ることが可能になります。

MacintoshやiPhoneの産みの親である「天才スティーブ・ジョブズ」も、LSDを使用したことがあり、その時の体験を「人生の中で最も重要な体験のひとつ」だとしています。それは幻覚をみたというよりも、「自分自身のセンスを強化し、別のものの見方を与えてくれたことに起因している」ようです。

そんなLSDによって得たインスピレーションから生まれた名曲として知られているのが「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」。頭文字をとると「LSD」になることから、当時はラジオで放送禁止になったこともあります。しかしながら、タイトルに関しては偶然であり、ジョン・レノンの息子であるジュリアン・レノンが保育園で書いたルーシーという友達の絵が元になっているというのが定説です。

タイトルの略称からこの曲が有名となっていますが、ジョン・レノンはLSDを「天の恵み」と表現したほどであり、他にも「レイン」や「アイ・アム・ザ・ウォルラス」などもLSDの影響が強いものとして知られています。

 

【ビートルズがLSDによってインスピレーションを得た理由】

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薬物によってインスピレーションを得ていたというと、なにか「アンダーグラウンド」な感じがありますが、前述したようにLSDには常習性や毒性は少なく、依存性も低いものです。

そんな比較的安全な薬物がなぜ規制されたのか? 
それは幻覚をみたり、意識が拡張することによって「パニックを起こして、事故を起こす人が多発したため」でした。良くあるケースとしては、自分に羽根が生えたと思って高所から落下したり、パニックになって外に飛び出して車などにひかれてしまうというものです。また、自分自身が別のものに見えたりして自傷行為に走る場合もあります。さらに、LSDという名称で粗悪な密造品が作られたこともあり、それに含まれた「不純物で死亡したというケース」もあり、このような密造品の流通が「裏社会の資金源となる」ことを危惧したということもあります。

このように「LSDが規制されるのは当然ではある」のですが、その作用自体はシャーマンが使っていたものと同じであり、きちんとした状況で適切に使用したならば、「様々な情報を受け取ることが出来る」のも事実です。合法であった時代に、世界的な名声を得ていたビートルズの面々が「さらなる高みを目指すために、LSDを使用したのは当然の成り行き」だったのでしょう。

前回の瞑想でもそうですが、意図しているのかどうかは今となってはわかりませんが、ロックという当時最先端の音楽を産み出しながらも、「ビートルズの根底には瞑想やシャーマンの薬物といった、古来からの叡智を求める気持ちがあった」ように思えて成りません。音楽というのは、本来宗教的なものだったわけですので、ビートルズの音楽が世界的に受け入れられたのは、人々の集合的意識に影響を与える要素が含まれていたのかもしれません。

次回は、そういった古来の宗教的な音楽との関わりについて紹介したいと思います。

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