ギー(精製バターオイル)を使った、 ビューティー&ヘルスケア<6>~インド生活『村上アニーシャのアーユルヴェーダ』vol.63

ギーは、ピッタのアンバランスに理想的な冷却オイルのひとつで、目を元気回復させるためにもってこいのオイルです。

~インターネット時代の眼の疲れを癒す、アーユルヴェーダ伝統の治療法「アカシタルパナ」~

目はよく、「その人の魂を映し出す窓」ともいわれる部分です。

アーユルヴェーダでは、目はピッタドーシャ(「火」の要素)が存在する主要な場所のひとつと考えられ、私たちの視力は、アグニ(火)の産物であり、過剰な熱やピッタは、目に蓄積されることがあります。
それは、目の乾燥(ドライアイ)や、目の緊張や充血、炎症、視力の低下となって現れると考えられています。

インターネット時代の現代に生きる私たちは、知らず知らずのうちにコンピュータの画面を過度に見すぎて目を酷使してしまっていることも少なくありません。

そんな時、目を十分に滋養し、休ませることができれば、目に関する病気も、大いに防げることでしょう。

そこで役に立つのが、今回ご紹介するアーユルヴェーダ伝統の目のケア方法のひとつ、「アカシタルパナ」です。

ギーシリーズ最後の今回は、このアカシタルパナについて、お伝えしたいと思います。

(ネトラタルパナ)

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■目を滋養して毒素を引き出す「アカシタルパナ」

アカシタルパナのアカシは梵語で「眼」を、タルパナは「栄養」を意味します。
このアカシタルパナは、小麦粉と水で作った生地をドーナツ型にし、それぞれの目の縁に置いて固定した後、窪みに温かいギーを注いで、目を数分浸し、目の組織から毒素を引き出す方法です。

★伝統的なやり方と現代風のやり方

・従来の方法

伝統的なやり方では、患者はマッサージベッドの上に仰向けに寝ます。それぞの目の縁にはドーナツ型の土手を固定し、約27度のぬるい状態に温められたギーを注ぎます。
(ドーナツ型の土手を作る生地に使われる粉は、程よく粘りがあり、十分な固さで固定でき、ギーの漏れを防ぐことのできるウラッド豆(和名はケツルアヅキ)が伝統的に使われてきました。)

ギーを注ぐとき、目はまず閉じた状態にし、目の上をギーがすっぽりと覆ったところで、目をゆっくりと開いて、2、3分、ゆっくりと瞬きをしたり、眼球を動かします。

その後、ギーとどてを取り除き、目をコットンでふき取り、すぐに明るい光が目に当たらないように、目を徐々にならしていきます。
約30分間を要する方法になります。

・現代風にアレンジ

一方、このようにわざわざ、粉を練ってドーナツ型の生地を作らなくても、薬局やスーパーで手に入るアイカップを使えば、このプロセスを手っ取り早く、簡単にできます。

(注意点:使用する前は必ず、アイカップの滅菌が必要で、使うギーは、他の食品や滅菌されていない食器に接触したギーを使わないことが条件となります。また、一度使ったギーは、絶対に繰り返し使わないで下さい。バクテリアの増殖による深刻な目の疾患に発展するおそれがあります。)

滅菌された調理器具を使って、ギーを小さじ2、3杯温めた後、ギーを体温程度になるまで冷まし、アイカップに入れた後、頭を前に下げて、ギーの入ったアイカップを目にあてます。

次に、頭を元に戻し、目を開けて、アイカップをしっかりと2分間固定します。

ギーが目に十分浸透するように、ゆっくりと瞬きをしたり目を動かします。(この時、横になりながらやると、体をリラックスさせながら重力にまかせてできるので、最も効果的です。)

(インドのスナック、マサラドーサにも使われているウラッド豆)

 

■アカシタルパナから得られる効果

ギーは、ピッタのアンバランスに理想的な冷却オイルのひとつで、目を元気回復させるためにもってこいのオイルです。

ギーによって、内側と外側の知覚に関連する微妙な経路が浄化され、内側の視力を改善させるといわれています。

「主な効能」

*目の神経と筋肉を強化するため、目の元気回復全般によし
*ヴァータとピッタが悪化した状態を軽減させる
*視力を向上させる
*目の乾燥やかゆみの治癒
*目の灼熱感をなだめる
*目の周りのくまが薄くなる

目がより乾燥しやすくなる冬や、気候的にピッタが悪化しやすい夏に特におすすめです。

週に3、4回のペースで、2週間から3週間続けましょう。
ピッタのアンバランスが中和され、ドライアイや目の疲れが回復します。

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最後に余談ですが、このアカシカルパナに伝統的に使われてきたウラッド豆は、私がインドにいた頃に、雇っていたアヤさん(お手伝いさん)を通じて知り、それ以後よく気に入って食べていた豆のひとつでした。

インドにある豊富な豆類の中で、なぜこの豆を気に入って食べていたかというと、この豆の持つ独特のねっとり感と食感が、まるで魚のすり身を食べているかのような味だったからです。

インドで暮らしていると、ノンベジフード(非菜食)を食べる機会が自然に減り、ほとんど野菜した食べていなかった時期も長くありましたが、インドの有名な軽食・マサラドーサの原料としても使われているこのウラッド豆、野菜なのになぜかノンベジっぽい味がする不思議な豆で、ノンベジフードが食べたくなったときにはもってこいの代用品になります。

ヴィーガンを実践していて、ノンベジフードが恋しくなった時などに、個人的におすすめです。

 

《村上アニーシャ さんの記事一覧はこちら》
https://www.el-aura.com/writer/%E6%9D%91%E4%B8%8A%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A3/?c=73188
(トップ画像/ウラッド豆の皮付きヴァージョン)