海の魔物から身を守るための特別な図形をご存じですか?

現在では酸素ボンベなどはつかわないものの、多くの海女がダイビングスーツを着用するために、ドーマンセーマンを身につけることも少なくなってきていますが、古来から使われているだけに、その「お守りとしての効果はバツグン」です。

【1300年前から活躍していた海女】

伊勢志摩といえば、5月26日、27日に行われた「伊勢志摩サミット」で話題となりました。厳密に言うと、現在は伊勢志摩という地域はなく、「三重県の南東部」を指します。伊勢の神宮が存在する「伊勢市」を初めとし、水産資源が豊富で観光業が盛んな「鳥羽市と志摩市」が含まれているために、主に「観光的な目安」として使われることが多いようです。

今回紹介するのは、そんな鳥羽市と志摩市で活躍する「海女」が身につけているお守りです。元々は男性も「海人」と書いて「あま」と呼んでおり、男女の区別はなかったようですが、いつしか女性が中心となっていきました。伊勢志摩地方では古くから海女が活躍しており、今から1300年前に編纂された『万葉集』にもその記述が残っているほどです。

かつては日本全国に存在していた海女ですが、現役で活躍している女性は激減しており、かつては海女がいたものの、今では誰もいないという地域も増えています。ちなみに、世界的に見て、「素潜りによる漁が行われているのは日本と韓国だけ」なのです。

 

【海女が恐れる海の魔物】

(画像提供・ウィキペディアより)

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素潜りで10メートル以上潜って、獲物を捕るという過酷な職業につく彼女たちが恐れたのが「海の魔物」。海というのは、現在でもすべてが解明されていない未知の部分がありますが、そんなところに身体一つで挑んでいる海女が、「迷信深くなるのは当然」といえるでしょう。

海の魔物にはさまざまな種類がいますが、もっとも恐れられていたとされているのが「トモカヅキ」。これは、自分一人しかいないはずの海中に、自分とそっくりの人がいるというもので、現代風に言うと「ドッペルゲンガー」ともいえます。「ドッペルゲンガーにあった人は死期が迫っている」という説もありますが、同じように、「トモカヅキに誘われてしまうと、命が奪われてしまう」として、とても恐れられていました。誘いに乗らなくてもトモカヅキに出会っただけでも、数日間は海に潜らなかったのです。

 

【海の魔物から身を守ってくれるドーマンセーマン】

(画像提供・ウィキペディアより)

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このように海の魔物から身を守るために、彼女たちが身につけていたのが「ドーマンセーマン」と呼ばれる図形です。簡単にいうと「星形と格子状の模様」です。このふたつの模様を手ぬぐいや襦袢などに貝紫で染めたり、黒糸で刺繍したりすることで、お守りとしていました。

なぜ、このような図形が使われるようになったのかというと、星形は一筆書きでかけることから「始めも終わりもなく、魔物が入り込む余地がない」とされ、格子状の模様は「古くから籠目などとも呼ばれて魔除けである」とされていたためなのです。

 

【ドーマンセーマンと陰陽師の関係は?】

(画像提供・ウィキペディアより)

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また、名称から「陰陽師と関係している」ともいわれています。格子状模様はドーマンと呼ばれ、「蘆屋道満」、星形の模様はセーマンと呼ばれ、こちらは「安倍晴明」を示すというのです。ただし、これは元々あった図形に「後から理屈をつけた可能性が非常に高いもの」です。

安倍晴明と星形模様、いわゆる五芒星は現在では、「陰陽道のシンボルとして有名」ですが、実際には晴明が活躍していた「平安時代に五芒星が使われていたという資料は残っていません」。また、蘆屋道満は晴明のライバルとして登場しますが、こちらは「実在の人物ではないという説が有力」なのです。

 

【魔を避けるシンボルであるドーマンセーマンを身につける】

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ただし、どちらも古くから「力がある」と考えられていた模様であることは間違いありません。格子模様であるドーマンは、平安時代に使われていた「祭祀用土器に刻まれていました」し、西洋では「五芒星を魔除けのシンボル」として使っていました。このような模様を使いこなしていたのが「修験者」です。宗教者と拝み屋の中間的存在として活躍していた修験者は、さまざまな技術を取り込んでおり、格子模様は「九字」として魔除けの術になっていますし、同じく九字の別法として五芒星を使う術も存在していました。彼らが「安倍晴明と五芒星を結びつけた」という説もあります。

現在では酸素ボンベなどはつかわないものの、多くの海女がダイビングスーツを着用するために、ドーマンセーマンを身につけることも少なくなってきていますが、古来から使われているだけに、その「お守りとしての効果はバツグン」です。これから、海にいく季節になると思いますので、海の魔物や災難から身を守りたいという方は、これらの模様を身につけることをオススメします。ドーマンはともかく、セーマンである五芒星はアクセサリーとしてもポピュラーですので、見つけやすいでしょう。また、伝統的な海女のシンボルとしてならば、伊勢志摩ではお土産として鮑の殻やアコヤガイの貝殻で作ったものなども販売されています。こちらは、普段から身につけていても可愛いデザインも多くありますので、伊勢志摩を訪れた時は探してみて下さい。

Diving woman is name of “Ama”
Amulets to protect themselves from the monsters of the sea.

 

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