静まった会場内に磬子の音が優しく鳴り響く……
たった一つの音色が、そこにいる全ての人々に、仏の心を教えてくれます。
“Happiness Is The Way ~幸せへの道はない、幸せこそが道だから~”
残念ながら来日することができなかったティク・ナット・ハン師ですが、プラムヴィレッジの僧侶団とともに、確かにハン師の“魂”〜Spirit〜はそこに存在したのです。
磬子の音が響き終わる頃、いよいよ演奏が始まります。
クラシックギターが奏でる六拍子の伴奏に合わせてバイオリンの柔らかな音色が、少しずつ皆に幸福を運んでくれるのです。
プラムヴィレッジ僧侶団による美しいチャンティングが日本のコンサートホールで演奏されるのは今回が初めてとのこと。
仏教といえば“東洋”ですが、「ヴァイオリン」「ギター」という“西洋”の楽器を用いて演奏されたことに驚いた方も多いのではないでしょうか?
そこにはハン師が拠点とされるフランスのプラムヴィレッジ及び、マインドフルネスを掲げて世界中をまわられた際に生まれた多くの想いが、音楽と共にたくさん詰まっているはずです。
さらに演奏は進みます。
シスターたちによる女声部の合唱から男声部の合唱へ……それを繰り返した後、ラストは混声による大合唱。
実は後から知ったのですが、南無観世音菩薩を唱えていたのです。
演奏された曲のキーは変ホ長調(E flat Major/Es dur)のフラット調。
全体的な印象はとても神聖かつ優しさに包まれたサウンドに感じます。
譜面の調号にシャープが付く音階の楽曲は全体的に力強く感じ、今回のように調号にフラットが付く音階の楽曲は逆に柔らかく感じると専門家の間では良く言われています。
ピアノやヴァイオリン等、楽器を演奏された経験のある方は感覚的にしっくりと来る方も多いと思われますが、例えばシャープ調であるイ長調(A dur)ですとベートーベン「交響曲第7番」のように輝かしく、フラット調である変ロ長調(B dur)ですとシューベルト「アヴェ・マリア」のように柔らかく感じます。音楽もとてもスピリチュアルなもので、これを物理的に証明するのは不可能と言われています。
さらに、この変ホ長調ですが、譜面に♭が3つとされることから古来より三位一体(TRINITY)に繋がるとされていました。
調べた際に偶然見つけた情報ではございますが、この繋がりを意識すると、ティク・ナット・ハン師及び僧侶団の方々とTRINITY編集部との出会いは必然だったのでは? と改めて感じるきっかけになりました。