アンガーマネジメントVol.44 ~ プチセレブ自慢にムカついたら ~

お金があれば感情も安定する?

お金が山ほどあれば、感情も安定すると思っていませんか?もしくはお金を持ってプチセレブな生活を見せびらかす身近な人に、嫉妬や劣等感を感じていないでしょうか。
確かに、お金で解決できる問題はたくさんあります。お金を出してエステや高級ホテルに行けば、幸せな気分も多少味わうことができるでしょう。

ただ、お金に感情を安定させる力があるかというと……実はあまりないのです。

ポジティブ心理学の先駆者でペンシルベニア大学教授のマーティン・セリグマン教授が著書の中で面白い結果を公表しています。

生活にどれだけ満足しているか(生活満足度)を調査し、それを各国の購買力と比べてみたのです。たくさん稼いでいる購買力が高い国ほど、より多くの幸せを感じていそうですが、結果はそう単純でもありませんでした。
 
こちらが結果の一部です
(引用:『世界でひとつだけの幸せ』 マーティン・セリグマン)

国名   生活満足度  購買力 (アメリカを100とする)
アメリカ 7.73   100
スイス  8.36   96
ブラジル 7.38   23
中国   7.29   9
インド  6.7    5
日本   6.53   87
ロシア  5.37   27

ある程度の購買力がある国は、総じて生活満足度が高くなりましたが、ある一定の線を越えると相関関係が見られなくなります。実際、購買力が日本の四分の一のブラジルやそれ以下の中国の生活満足度は、日本より上回っています。この境界線が、国内総生産(GNP)で八千ドル(約80万円)。例えば、GNPが110万円台のブラジルと、その5倍の500万円台の米国人では、生活満足度にほとんど差が出て来ないのです。

日本を考えてみると、近年のGNPは約360万円、平均所得は約400万円。生活保護も家族4人で東京に住んでいれば20万円以上もらえる場合もありますから、いくら格差社会と言っても、幸せになる最低要件は、お金をベースに考えると日本に住んでいる限り皆持っていることになります。

収入と幸福度の関係

では一体いくらで完全に収入と幸福度の関係が頭打ちになるかというと、これも面白い調査があります。ノーベル賞を受賞したこともあるダニエル・カーネマン教授が千人の米国人を対象とした結果によると、およそ年収7万5千ドル(約750万円)ほどで幸福感の向上が止まるそうです。

もしあなたが、「あのうちは開業医でデザイナーズマンションに住んで、生活態度も鼻につく」とか、ご主人に対して「もうちょっと稼いでくれたら、子供にももっと楽しい思いをさせてあげられるのに!」と思っているとしたら、それはあなたが現実に歪んだラベルを貼っているだけです。

プチセレブ自慢にカチンときたら、見せびらかしている本人と自分の間には大して幸福度に違いはないという事と、あなた自身が心の中で「◯◯が買えない私は不幸」という意味付けをしているに過ぎない、という事を思い出して下さいね。

参考文献
『世界でたったひとつだけの幸せ』マーティン・セリグマン著 アスペクト