アンガーマネジメント Vol.22「上司のミスを押し付けられたら」

理不尽なことに対して
いかに自分の気持ちを整理するか

「手柄は上司のもの、ミスは部下のもの」というドラマのセリフを地で行くような話は、私たちの周りにもゴロゴロしていますね。

日本テレビの人気ドラマ『花咲舞が黙ってない』では、地位も権力もない一女性銀行員が、弱い立場の人たちの権利を代弁すべく、上司やお偉方に対して立ち向かっていくストーリーです。前回の放送では、「上司が無理矢理取引先に融資した5000万が焦げ付き、その責任を部下になすりつける」という話でした。

組織内に理不尽な問題を解決する場所があれば、そこに訴えるのが上策です。ただ往々にしてそんな場所はなく、立場の弱い人を上司と同等にサポートする状況が整っていない限り、いくら部下が声を上げても握りつぶされてしまうのが現実。
ドライなようですが、今回は「どうやって正論を通すか」でなく「いかに自分の気持ちを整理するか」についてお話します。

上司や組織を改善するのではなく
自分自身の受け止め方を変える

ドラマのように上司のミスを部下である貴女のせいにされたら、どんな風に気持ちを整理すれば良いのでしょうか。
以下3つのステップを踏んで考えてみましょう。

【ファーストステップ】

「組織では理不尽なことが多々あって、それがまかり通る」という現実を受け入れます。私たち一人ひとりは完全でも高潔な人間でもなく、卑しい面も必ずあり、それが寄り集まってできている組織には、少なからずひずみが生まれます。ひどいケースは、良心の呵責を全く感じない「サイコパス」が会社の上席に座っていることもあるのです。

「組織とは常に精錬潔白であるべき。フェアであるべき。上司は人として聖人君子のような完璧な存在でなければならない」

というような考えは大変理想的ですが、現実と乖離しています。これを
「組織は不文律や暗黙のルールがあり、それは必ずしも正論と一致しない。仕事ができても出世するとは限らない。上司もたまにバカな面がある人間だ」
と、期待値を現実に近づけてみます。

【セカンドステップ】

「上司のミスを押し付けられた」という出来事に対して、どういう意味付けをしているか一度分析してみる
出来事のせいで感情が生じるのではなく、それをどう認知するかによって感情が湧いてきます。注意しなければならないのが、認知の過程で私たちの心は、現実と符号しない「否定的な思考」に支配されがちになってしまう点です。

例えば「上司は私をクビにしようと思ってミスを押し付けている。ここで声を上げなければ、私はずっと奴の下僕だ。それにこのミスが私のせいだとなったら、私は全員から使えない人間のレッテルを貼られてしまう」

この思考を、より合理的な考えに書き換えてみます。
「上司は元々気分屋で責任を回避する気質があるから、私のせいにしたいんだろう。だからと言ってずっとこの力関係が続く訳でもない。そのうち自分の方が出世して、こいつの上司になってやる。私は普段から真面目に仕事をしているから、見る人が見れば、上司が部下に責任をなすりつけているのは一目瞭然だ」
お気づきかと思いますが、怒りはエネルギーにもなります。他の事でこの上司を追い抜いてやる!など、発奮の材料に変えられると尚良いですね。

【サードステップ】

組織に残るのか決める
今あなたがいる現実は、全てあなたの選択の積み重ねによってつくられています。現状に文句があるなら、少し厳しい言い方かもしれませんが、それはあなたが選んで来た選択に文句を言っているのと同じことなのです。

理不尽がまかり通る組織や上司が嫌なら、独立して自分でビジネスを始める権利は誰の手にもあります。それを放棄して組織に残ると決めたら、甘んじて組織の慣例に合わせて行くのが無難です。

フォロワーシップが健全に機能するには、ほとんどの組織でその土壌が整っていないと個人的に感じています。
今回は敢えて上司や組織の間違いを正すことには触れず、自分自身の心の整理の仕方をお話しました。

社会に出ると、嫌な思いをすることもたくさんあります。理不尽な目に遭ったら怒りを感じて当然です。ただその怒りで自分を傷付けることだけは、止めましょう。

 

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