一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.32 『東京難民』

現代日本の裏社会の怖さを描く
若者の転落を描く衝撃作!
ネットカフェ難民→ホスト→日雇い労働者

 

今の日本の、闇の部分を描いた恐ろしい映画である。
授業にも出ず、毎日コンパ三昧のちゃらんぽらんな生活を送っていた大学生が、ある日突然大学を除籍される。授業料の未払い。学費や生活費を出してくれていた父親の失踪によって、彼はアパートからも追い出され、ネットカフェで寝泊りするようになる。新薬のモニターなどで食いつなぐが、騙されて客として入ったホストクラブで働くことに。しかし、華やかなホストの世界の裏側は非情なもので……。

普通の今時の大学生が、あっという間に転落していく姿を異様にリアルに描く。
原作(福澤徹三)は緻密な取材をしての執筆だそうで、こういう主人公みたいな大学生は実際にも少なくないのだろう。ネットカフェ難民やファーストフード難民の実態はテレビや新聞で見たことがある。

本作は主人公だけじゃなく、脇の人々も共に堕ちていく様子が見どころである。
人が堕ちていく姿を見るのは楽しい。こういういいかげんでダラダラしている主人公にはちっとも同情しないし、「自業自得だよ」と思う。けど、主人公に入れ込んでホストクラブ通いで身を持ち崩す、看護士の転落には「哀れ」を感じてしまった。同じ「バカだなあ~」でも、私が女だからだろうか?

女の転落には再生不能のような「荒れた」感じがいつもしてしまう。女がそこまで堕ちるのは、心の問題のような気がするのだ。彼女の変わりようは見ごたえがある。しかも、清純派だったはずの「東宝シンデレラ」審査員特別賞受賞という経歴を持つ大塚千弘がヌードも辞さず熱演しているのだ。
また、ホスト業界の裏のシビアさも鳥肌ものだった。

 

どうしてこうなるのか?
「自業自得」と「因果応報」を知る
さて、自分はどう生きるべきか?

 

人が堕ちていく姿を見るのは楽しいのだが、それは必ず最後には復活してくれないと、やるせないし、陰々滅々で辛い。本作も、堕ちるところまで堕ちた主人公が最後の最後に再生への道を歩みだすというラストがあるから救われる。これがなかなか歩みださないのでやきもきしたけど。なんとか希望のあるラストでこちらも浄化される。が、実際には堕ちたままの人がたくさん今も日本中にいるのだろう。
しかし、それはやはり「自業自得」なのである。

自分で自分の人生は管理し、設計し、造っていかなくてはならない。流されることも必要だけど、流されないことも重要なのだ。

どうしてこうなっちゃうんだろう? それにはちゃんと原因があるのだから。世の中は因果応報で出来ている。そういうことをほんとうにちゃんと多くの人が知ると、生きていくのは少しでも楽になるのではないだろうか?

今、日本はほんとに大変な時代を迎えている。この映画は今の日本の実態の一部だ。恐ろしいが現実を見て、さて自分はどう生きていくべきか? 考えて欲しい。

 

『東京難民』
2月22日(土)より、全国ロードショー!
http://tokyo-nanmin.com/

TOHOシネマズ梅田/TOHOシネマズなんば/
TOHOシネマズ二条/TOHOシネマズ西宮 OS、他にてロードショー!

■スタッフ
監督:佐々部清
製作・プロデュース:森山敦
プロデューサー:臼井正明
原作:福澤徹三
脚本青島武
■キャスト
中村蒼:時枝修
大塚千弘:北条茜
青柳翔:順矢
山本美月:川辺瑠衣
中尾明慶:小次郎

©2014『東京難民』製作委員会