目に見えないけどそこにある世界~見えないモノと共存するということ~

真実を見逃しかねない「視覚優先」の現代社会

昨今よく耳や目にする言葉「殺菌、抗菌、滅菌」。
手で触る物は「抗菌」。
口に入れる物には「殺菌」。
清潔を保ちたい物には「滅菌」。
全ての言葉に共通する考えは、「人間から菌を遠ざけよう」です。

風邪や食中毒が起こるのは、目に見えない菌やウイルスが原因であり、それは医学や科学が証明しているんだから、健康でいるためには菌やウイルスを体から遠ざけるべきだ。
菌は目に見えないし、どの菌が人間に悪影響かわからない。
目に見えないのだから、殺菌、抗菌、滅菌すれば良い。

とにかく菌は一律排除して、医学や科学が証明している、人間の健康にとって有用な菌だけ摂取するようにしよう、というのが現代の感覚だと生活していて感じます。

もちろん、外出先から帰ったら風邪の予防に手洗いうがいをするのは非常に有効で、それは誰も疑う余地はありません。

トイレや、調理場所を清潔にしようとするのは当然の事です。不衛生なトイレや調理場のあるレストランでは誰も食事をしようとは思わないし、綺麗なトイレや調理場があるレストランがあれば誰しもがそちらに行きます。実際に食中毒なども不衛生が原因で起こるわけですし。

それは人間の行動として当然の事としても、漬物屋から言わせて頂くと、現代人は少々菌に対して敏感で、菌を恐ろしい、汚らわしい物として見すぎているように思います。

昨今、和食が世界遺産に登録されましたが、「日本食」というのは、上手く菌を利用した物が大変多くあります。
上手く利用した、というよりも、そこには「我々は菌と共に生きている」という感覚を強く感じます。

日本という国は、地域にもよりますが、気温、湿度が菌の繁殖にはかなり適している地域です。
漬物ももちろんその一つですが、味噌、醤油等々、菌による「発酵」を上手く利用した料理や調味料が非常に多くあります。

「菌と共に生きる」、これは「見えないモノとの共存」と捉える事も出来るんではないかと思います。

今でこそ科学的に目に見えない微細な物もはっきりと見る事が出来るようになりましたが、その様な技術がない時代。菌や見えないモノの存在を感じ、認識し、それと共存する生き方というのは、現代人ではなかなか考えられない感覚があったんではないでしょうか?

私自身は漬物屋として、こういった「見えない存在」と日々付き合っておりますが、「見えない」というのは、視覚以外の感覚を凄く使います。

人間の視覚というのは素晴らしい感覚器官ですが、しかし、だからこそ真実を文字通り見逃したりするのではないか、と最近思うようになりました。
現代社会は結果や見た目が優先されているのも、「視覚優先」になってしまったからじゃないのかな?と思ったりもします。

私自身は霊感や特殊な能力は持ち合わせておりませんが、この連載が皆様のお役に立てれば幸いだと思い、主観になりますが自分の体験した、体感した事を中心に書かせて頂こうと思っております。