ワンネスに還る旅と、モナーク蝶の大飛行

スピリチュアルの分野では、私たちの「魂」のことを、よく大空を舞う「蝶」になぞらえますよね。
幼虫のときはちょっと醜いけど、やがて成虫の蝶になったときには美しい羽を広げ、優雅に自由にはばたいていく――。
私たちの在り方というのも、本来はそのようなものだと言われます。

終末期医療の草分けとして世界的に著名な精神科医のエリザベス・キューブラー・ロスも、蝶を自身の思想のシンボルにしていました。

魂の旅

蝶がまるで「魂の旅」の縮図のようだなと感じられることのひとつに、北米に生息する「モナーク蝶(和名はオオカバマダラ)」の大飛行があります。

メキシコの高地には、そのモナーク蝶が数百万匹もの大集団で冬ごもりする木があって、テレビなどで「蝶のなる木」として紹介されるのを見たことがある人も多いでしょう。その木は、世界自然遺産にも指定されています。
この蝶は春になると、越冬地のメキシコから、3000km以上も離れたカナダまで、大陸縦断の壮大な旅をするのです。日本に当てはめれば、北海道の稚内から沖縄の西表島までで、それだけの距離をあの小さな蝶の羽で飛ぶわけですから、信じられないですよね!

「渡り鳥」のように「渡り蝶」とも呼ばれていますが、ただ渡り鳥とは大きく違う点があります――
モナーク蝶の旅が驚異的なところは、寿命わずか数週間という成虫が、何世代も生命のバトンをつなぐようにして、遥か目的地のカナダまで渡っていくということです。

メキシコを旅立ったモナーク蝶は、旅の途中で卵を産み付けたあと、死滅してしまいます。
そして卵から生まれた幼虫は、羽化して蝶になったら、本能として北上の旅を続けるのです。
さらにこの蝶も旅の途中で卵を産んで死滅し、次に生まれた幼虫が羽化して――と、世代交代を繰り返しながら、実に3~4世代もかけて夏のカナダに到達するという、ものすごい旅です。

世代を超えて

そうして夏のカナダで生まれた新しい世代は、その地に落ち着く間もなく、今度は越冬地メキシコへ戻るための南下の旅に出ます。
その蝶自身にとっては、まだ一度も見たことのない、「先祖」たちが旅立ってきた地に向けて――。
ここでモナーク蝶の大きな謎とされているのは、カナダへ北上する旅ではいくつもの世代交代を重ねたのに、越冬地へ帰る旅のほうは、たった「1世代」で行われることです。

また、その新しい世代は、祖先が飛んで来たのと同じルートをたどり、越冬地では先祖がとまっていた同じ木に戻ることもあるそうです。実に不思議ですよね。いったい、どこでどのように覚えているものなのでしょう?…

そのようにして、メキシコの森へと帰ってやっと、世代をつないだ一連の「渡り」の旅が終結するわけです。

ワンネス

モナーク蝶の旅は実に壮大だけど、私たちの「魂の旅」はさらにケタ違いのスケールです。

私たちの魂は、もともと大きな「ワンネス」の存在であったと言われます。そこからバラバラの小さな魂に分かれ、源から離れた旅に出ました。そして、私たちはこれまでに数百回もの転生を重ねてきたとも言われます。
そして近年、世界のさまざまなスピリチュアルのリーダーたちが語っているのは――、おおもとのワンネスへと還る旅が始まろうとしている、ということです。
私たちの魂はこの世界で数百世代にわたる大旅行をしながら、ワンネスへと戻る旅のほうは、実はたったの「1世代」で行うのかもしれません。
戻るための「新しい世代」――、それがいま地上に生きるあなたや私だとすれば、何ともすごいことだと思いませんか!

でも、いったい、どこへどうやって戻る?
その目的地やルートは、蝶の自然な本能と同じように、私たちの内にはじめから備わっているに違いないでしょう。
――「ここに在る」と。