一宮千桃のスピリチュアル☆シネマレビューPART.21 『おしん』

驚異的視聴率を誇る不朽の名作
今必要だからこその映画化!

1983年に放送された驚異的視聴率を誇る朝ドラ。
平均視聴率52・6パーセント、最高視聴率62・9パーセント。
「半沢直樹」も「あまちゃん」もこれには及ばない。
日本で放送後も世界中で放送されていて、当時香港やベトナムを旅行中「おしん」を見た!という声をよく聞いた。その度に「へっ?おしん?」と驚いたものだが、「おしん」は外貨獲得の貴重な輸出コンテンツだったのだ。
私は朝起きられない人なので、何度か昼の再放送を見ただけなのだが、今回映画を観て、「おしん」全篇観たい~!! と切に思ってしまった。そして、なんで今「おしん」の映画化? と思ったのだが、今、30年たっての今、だからこその映画化なんだと納得した。
今、必要だからこそ、映画化されたのだと。

お話は今から約100年前の1907年、明治40年から始まる。
山形の寒村。貧農の家で7歳まで暮らしたおしんは、口べらしのために奉公に出される。奉公先ではこき使われ、キツイ女中頭にしごかれる。そんなある日盗みの疑いをかけられ、ついにおしんは店を飛び出すのだが・・・。

おしんのライバル、後に良き友となる加代
彼女のシーンで涙!

映画はドラマのほんの前半しか描かれないのだが、それでも泣かされるシーンがいくつかある。私の隣の席の、たぶん20代前半と思われるツケ睫毛とキャミソールという薄着露出度がやたら目立つ今風の女性が、ほぼ全篇号泣していた。正直引いたが、若い人ほどこういう悲惨さを知らないだけに素直に反応するのかな?とも思った。

さて、私はちょっと上戸彩の母親がやはり若すぎるし、綺麗すぎるし、岸本加世子演じる意地悪な女中頭ももっと心底徹底的に苛める憎々しいぶち切れ演技が必要だったと思う。おしん役の濱田ここねちゃんはがんばっているが、先日「くじけないで」を観ていて、ふと芦田愛菜ちゃんがおしんを演じたらどうだっただろう?と思ってしまった。しかし、ここねちゃんの真っ赤になった頬には胸打たれるものがある。

私が涙したのは、おしんの二度目の奉公先での、そこの我儘な跡取り娘加代の行動にである。加代は女中たちの人気者の明るいおしんが羨ましい。自分は素直に気持ちを表現することがどうしてもできない。それでおしんに意地悪してしまうが、おしんが追い出されそうになった時、加代は行動する! ここで初めて涙腺切れました。加代の成長が嬉しかった。演じた井頭愛海ちゃんは、憂いのある淋しそうな表情が忘れがたい、今作の収穫である。脱走兵を演じた満島真之介と共に好演を見せてくれる。

忘れるな! 「おしん」は私たち日本人の原点だ!

スピリチュアル的視点で本作を観ると、この「おしん」という物語は日本人である私たちが忘れてはならない原点である。親や家族を思う心、子供のことを思う親心。奉公の辛さ。理不尽なことへの忍耐、がまん。苦労を乗り越える精神の強さ、明るさ、純粋さ、素直さ、聡明さ。山形という地方の自然の美しさ過酷さ貧しさ・・・。今改めておしんという少女のあり様に、私たちは学ぶべきこと、思い出すべきことが少なくない。

 

2013年10月12日(土)より全国公開
(C)2013「おしん」製作委員会

監督/富樫森
脚本/山田耕大
原作/橋田壽賀子
出演/濱田ここね、上戸彩、岸本加世子、稲垣吾郎、泉ピン子、井頭愛海、小林綾子、満島真之介

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