「個々のつながりがあれば世間は怖くない」。世界から見た日本とは?中野裕弓さんインタビュー PART.4

現地の空気を吸うだけで、自分の世界は広がる

― 世界を知るとはどういうことですか?
中野さん
「私は、19歳少し前にロンドンでの語学研修のために渡英しました。言語、髪や目の色、考え方や宗教の違う環境で、当初は驚くことばかりでした。語学学校で目にした世界地図はそれまで見慣れたものとは違い、真ん中にあるべき日本は地図の一番右端にありました。ある時、イギリスの田舎でおばあさんから“どこから来たの?”と聞かれ、日本と答えると、“日本は中国のどの辺り?”と真顔で言われ、ああ日本の認知度って実はそんな程度だったんだってちょっとショックでした。今から40年も前のことですから今とは状況は全く違います。そんな時代でも、分かり合えるようになると日本のことを説明できるし、あのおばあさんは、“話をした日本人はあなたが最初よ”と言っていたから、その後、日本についてもっと理解が深まって、私を通じて日本を少し身近に感じてくれたかもしれません。

個人と個人とのつながりさえあれば、広い世界は急に身近になってきます。だから世界にどんどん出ましょうよとお勧めしたいです。日本の外に出て行って、そしていろいろ吸収して欲しい。また、日本を外から眺める体験も貴重なもの。

自分が魅かれる土地って、やっぱりご縁があるところだと思うの。そこに行って、体験して、空気を吸ってくるだけでも自分の世界が広がる気がします」

オープンハートと健全な危機管理を持って世界へ出よう

― 海外に行って、自分のアイデンティティが目覚めることはありますか?

中野さん
「ありますね。海外へ日本の旗を持って行くようなものですから、何かした時に“日本人ね”と言われます。私は典型的な日本人ではないと思っていても、国籍が日本人だから、私を通して日本人だなって思われるわけ。

日本に住んでいた時は、日本人というマジョリティ(多数派)のなかの一人でした。だから“味噌汁”って言えばお互い説明が要らないでしょう。それが、イギリスに行った当時はまだまだ日本人が少数派だから、“どこから来たの?”“髪が黒いね”“みんな着物を着ているの”などたくさん質問をされ、その度に日本を考え直すきっかけになりました。そういう少数派の体験をすると、自分のアイデンティティがより際立ってきます。

今でも、留学したいって言う若い人たちとか、子どもがいるけれど海外で生活してみたいなんていう大人の人に、“自分が少数派であるという体験は貴重ですよ”って伝えています。少数派だから自立も早いし、責任もとれるような行動ができるようになる。大多数のなかにいつも溺れていると、誰かが責任をとってくれるわけですよ。誰かが助けてくれる。
そして海外に行く時は、“危機管理”だけは絶対にバッグに入れて行ってねって。犯罪に巻き込まれちゃったら、自分が被害を受けるだけでなく、相手の国にも迷惑をかけてしまう。相手国だってさまざまな経済事情など色々あるのだから、危機管理はちゃんとしていく必要がある。オープンハートと健全な危機管理を持って、どんどん出て行ったら良いと思う。

最近は、主婦の留学をトライしている人も結構いますね。子育てが終わったので、○○を体験しに3カ月とか半年留学します、っていいですよね。もうこの年だからなんて言わないで、子どもがいるからと言いわけしないで、やりたかったことがあるならばやっておきましょうよ。いずれそのうちなんて言っていては時間が過ぎてしまうだけ。思い立った時が吉日!ですものね。

~続く~

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Profile:
中野裕弓さん  公式HP http://www.romi-nakano.jp
『世界がもし100人の村だったら』訳者。世界銀行本部に日本人初の人事マネージャーとしてヘッドハントされる。著書に『世界でいちばん自分を愛して』(日本文芸社版)、『朝一番の、ちょこっとスピリチュアルな習慣』(メディアファクトリー)ほか多数

 


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