古代中国医学の考え方「五臓六腑」とは その12 三焦

六腑の最後「三焦」という腑はない!?

皆さん、こんにちは。 美容鍼灸師の折橋梢恵です。3月も終わりに近づきましたが、まだ暖かい日と寒い日の差が激しいですね。そのせいか今年の桜はとても鮮やかで綺麗に咲いたようです。

さて前回は、六腑のうちの「膀胱」についてお話をしてきました。 今回は、いよいよ六腑の最後である「三焦」という腑の働きについてお話をしていきたいと思います。

まず、現代医学において、実は「三焦」という臓器は存在しません。では、中医学における「三焦」の主な働きについて見ていきたいと思います。

① 気が昇ったり、降りたりする通路の役割を果たし、気を全身に行き渡らせる働きを持ちます。
② 同時に水分の出入する通路の働きも持ちます。

中医学でもこの「三焦」とは、特定の臓器を指しているのではなく、私たちの身体における飲食物の消化や吸収、伝達、排泄などの役割を含めています。つまり「三焦」とは物質的なものではなく概念的ものなのです。

また「三焦」は身体の3つの部位の働きを示しており、横隔膜より上部の部分を上焦といい、横隔膜より下部で臍より上部の部分を中焦、臍より下の部分を下焦と分け、これらの3つの部位全体の働きを統括するものとして捉えています。

中医学の考えでは、この三焦の働きが低下することによって、水分代謝や気の作用に支障がでてきます。例えば、尿量の減少や全身のむくみ、そして気が全身に行き渡らなくなると身体の末端である手足に冷えが現れやすくなったりします。

今までご紹介してきた臓腑の中で特に水分代謝に関係のある臓腑としては、しばしば肺と脾と腎が挙げられています。三焦は、水液が通る通路の役割も担っているため、三焦の機能低下によっても、水液の停滞によっておこるむくみや尿量の減少などがあらわれると考えられています。

三焦は、水の流れを管理する役割

また鍼灸の古い書物によると、「三焦は決瀆の官」と記されています。「決瀆」の「決」とは、切り開くという意味があり、「瀆」には、溝や用水路という意味があります。つまり、この「決瀆の官」とは、水の流れを管理する役割のことを指しており、私たちの身体でいえば、生命活動を維持するための気血水を調節する重要な場所であるといえます。

このように中医学では、実際に存在しない臓腑でも一つの働きとして捉えることがあります。このような考え方が中医学は科学的ではない、迷信と思われてしまう欠点でもあり、逆に現代医学では対応できない部分に対する強みであると言えます。

現代医学においては、実際に存在しないものを対象として診ていくことはできません。そのためこのような理論を肯定して頂くことは難しいことかもしれません。しかし世の中には目に見えないものでも大切なものはたくさんあります。中医学では、ツボや経絡、気なども含めて目に見えないものを感覚的に捉えて施術を行い、様々な患者様の悩みを解決することもあるのです。

ですから、このコラムを通じて少しでも多くの方々に中医学の考え方を知って頂けたら嬉しく思います。今回まで、五臓と六腑を12回に分けてご紹介してきました。次回からはまた新しいお話をさせて頂きたいと思います。

 

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