自然界のすべてに通じる古代中国思想「五行論」PART.6

皆さん、こんにちは。美容鍼灸師の折橋梢恵です。
先日は、五行論の要素の中から、「金」に焦点を当ててお話をしてきました。
今回は、その要素のうちの「水」についてご紹介していきたいと思います。

「水」とは、自然界に存在する水の特徴を表わしているといえます。
この「水」の意味する性質を中医学では、「潤下(じゅんか)」という言葉で表し、上から下に流れ落ちる様子、特徴、作用を表わしています。

この水の性質、様子から熱いものを冷やしたり、火を消化させたり、湿らせたり、潤すなどの特徴や作用を持っているものをすべて「水」の分類に属するものとして考えています。

この「水」の性質に当てはまるものを以前にご紹介した五行分類の中から、季節(五季)では冬、方位(五方)では北、色(五色)では黒、味(五味)では鹹(かん)(塩からい)が当てはめられています。

冬を表わす季語として「玄冬」という表現がありますが、ここで使われている「玄」とは「黒」を意味し、これはまさしく五行論で、冬は黒と同じ水に属していることからきた言葉といえます。

またこのほかにも人体をつくっている器官や組織の例として、臓器(五臓)では腎、五感(五官または五根)では耳、人体に存在する液体(五液)では唾(つば)が当てはめられています。
鍼灸の治療においては、耳鳴り、難聴など耳に関する症状がある場合には、腎の機能が低下していると考え、腎の経絡やツボを使って治療をしたりします。
また腎は、水分代謝に関与する臓器であり、水とも深く関係があるため水の分類に当てはめられているといえます。

最後に一つ食生活に対するアドバイスです。
五行論で、「水」に該当する五味は「鹹味」とお伝えしました。
この「鹹」は、塩辛い味を意味します。薬膳で鹹味は、硬くなったものを柔らかくし、潤す作用、熱をもった物を冷やすなど解熱作用もあると考えられています。例えば、お肉や野菜などを塩に漬けておくと柔らかくなり、水分が出てきます。

薬膳の考え方では、鹹味の食材としては、塩、醤油、シジミ、昆布、牡蠣、クラゲなどがあり、塩辛い味のするものが多く含まれています。
このように五行論(五行説)の考え方は、自然界のあらゆるものから私たちの身体や身近なものすべてにおいて用いることができる考え方なのです。
皆さん、「水」の性質についても理解して頂けたでしょうか?

五行論(五行説)の五つの要素については今回が最後になります。
自然界にある全てのものを五つに分ける考え方、昔の人々はこの考え方を元に様々な生活の場面で応用してきました。鍼灸治療は、その考え方を利用した治療法の一つといえます。
さて次回は、東洋思想とは少し離れ、現在注目を集める、美容目的の鍼灸「美容鍼灸」についてご紹介していきたいと思います。

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