「神霊の世界にもいろいろあるんです」 ~ 室生龍穴の超自然龍神 ~ 前篇

【到着】

彩楓は車から降り、境内に足を踏み入れた。
入ってすぐ横にある手水舎で手を洗い、鳥居の前に立つ。
何か、おかしい。
おかしさの原因は、すぐにわかった。
地域一帯に感じられ、近づくほどに強くなっていた龍神の氣が、境内に入ると消えていた。
鳥居の内側を眺めると、普通の、街なかの公園でも見ているような、そんな感覚。
鳥居が、逆に作用している。その内側だけが重たい。

正面には、拝殿がある。
苔むした屋根、杉の巨木。荘厳なビジュアルだが、迫力がない。
氣が、せまってこないのだ。
「あの中に……」と彩楓は思った。心が冷たくザワつく。
今日自分は、このために来たのだ。確かめなければ、ならない。
彩楓は一礼をし、鳥居をくぐった。

 

【拝殿】

一歩一歩、踏みしめる砂利の音、小鳥のさえずり、それらに覆いかぶさる、ガアンゴオンという重い金属音。
神社の向かいにある工場の音が、何かを暗示するように響いていた。
拝殿の前に立つ。鈴を鳴らそうと思ったが、手が出ない。
少し離れ、改めて拝殿を眺めるが、参拝する気にならない。
「呼び出してはならない」と思った。
怖かった。
今この鳥居の内側は、龍神の氣も届かない、いわば向こうのホームグラウンドだ。
呼び出して対峙すれば、一瞬で呑み込まれるのではないか。
安全策をとり、持ってきた龍笛を吹いてみようと思った。

 

【龍笛】

カメラをまわしていた夫に、龍笛を持ってきてもらった。
拝殿の周りを歩きながら、どこで吹こうか考える。
裏に回って本殿も見てみたが、やはり拝殿がおかしいと思った。
本殿と拝殿の間から、拝殿に向かって吹いてみると、最初こそ音が出たが、すぐに押し返すような氣に阻まれてしまった。
少し場所を替えてまた吹いてみるが、やはり押し戻されてしまい、ついには掠れた音さえ出せなくなった。
試しに拝殿を背にして外側に向かって吹いてみたら、ちゃんと音が出せる。
本殿は清浄さが保たれており、参拝もできた。
やはり拝殿の中に「なにか」がある。
龍笛を吹けば、龍神の氣が届いて一気に解決できるかと思ったが、そうも甘くないようだ。
ここはひとまず、龍穴で龍神に会ってこよう、と彩楓は思った。

 

【後編につづくよ】

というわけで後編につづくんですが、ここまでの経過を動画にまとめました。
記事の内容を動画冒頭で喋っていますので、必要のない方は動画の5:00からご覧ください。
それから続きが読みたい見たいよーっと思ったら、記事下のイイネを押してくださると嬉しいです!

https://youtu.be/yNazi7h-sK8

 

《望月優次(もちづきゆうじ) さんの記事一覧はコチラ》
https://www.el-aura.com/writer/mochizuki/?c=158765