動物

深い愛情を持ち、大自然と共に生きる狼が与える癒し

残念ながら、日本で神として信仰されてきた固有種である「ニホンオオカミ」は、すでに絶滅してしまいましたが、多くの農家を悩ませている鹿や猪の害を解消するためには、日本でもイエローストーン国立公園のような対策を取ることが必要になるのかもしれません。

【実は悪役ではなかった狼】

日本ではすでに絶滅してしまった動物である「狼」。日本のみならず西洋でも特別な動物と考えられていたために、様々な物語に登場しています。現代までも残る「赤ずきんちゃん」や「三匹の子豚」に「悪役として登場する」ことや、人間が満月の光に当たることによって、狼に変化する「人狼」が西洋ではポピュラーなモンスターであることから、「狼といえば、悪役」のようなイメージがありますが、本当は非常に「感情豊かな動物」なのです。

 

【愛情深い狼】

「一匹狼」という言葉がありますが、基本的に狼は群れで行動します。「パック」と呼ばれるこの集団は、夫婦を頂点とした家族で構成されています。動物の群れというと、一夫多妻制が多いのですが、「狼は一夫一婦制であり、その夫婦は一生連れ添い」ます。また、生まれたばかりの子供は生後1年は、群れの中で何をしても許され、リーダーである「父親が離乳食を食べさせ」ます。人間のように道具があるわけではありませんので、自らが狩りで得た生肉を胃の中である程度消化したものを、吐き出して食べさせるという「献身的な世話をする」のです。

肉食動物であることから、凶暴なイメージをもたれがちですが、「狼は自分たちが必要な動物だけしか狩らないという智恵」をもっています。そんな賢い狼を、人間が凶暴な獣として駆除したことで、日本では狼が絶滅し、その結果、鹿や猪が激増したことで、近年では「農作物への被害が無視できないレベル」となっています。

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【狼によって生態系が改善された20世紀最大の実験】

アメリカの「イエローストーン国立公園」では、狼が絶滅したことで鹿が増えすぎ、公園内の生態系が崩れ、多くの緑が失われ動物の多様性もなくなりつつありました。そんな状況が、「狼が戻ることでがらっと変わった」のです。人為的に狼を再導入したことで引き起こされたこの成果は「野生動物に関する20世紀最大の実験」と呼ばれるほどのものでした。

狼が戻ったことで、増えすぎた「鹿の数は減少」しました。それだけでなく、鹿が狼から隠れるようになったことで、行動範囲が変わり、鹿が来ない場所では植物が復活し、それと共に姿を消していた鳥やビーバーなどが戻ってきました。こうして、「生態系が循環する」ようになり、狼を倒す熊などもあらわれた結果、イエローストーン国立公園の自然は回復したわけです。その結果、一度は「絶滅危惧種に指定されていた狼が2012年にはその指定を解除される」ほどになりました。

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(イエローストーン国立公園/画像はウィキペディアより)

 

【自然を調和させる神としての狼】

このような「狼の力を、日本人は本来は知っていたはず」なのです。アイヌ民族は狼のことを「ホロケウカムイ」と呼んでいました。これは「大きな口の神」という意味ですが、他にも「オンルプシカムイ」、すなわち「狩りをする神」などとも呼んでおり、それだけ重要な存在としていたことがわかります。また、本土でも、狼を「大神」、もしくは「大口真神」として信仰していました。狼が生態系をコントロールする、自然の智恵を体現する存在だということを、経験の中で理解していたのです。

そんな狼は、前述したように感情豊かな動物です。一夫一婦制の狼ですが、つがいが先に亡くなると残されたものは、「哀しみのあまり餌を食べなくなり、場合によってはそのまま餓死することもある」のだそうです。また、家族を大切にすることでも良く知られており、群れの中では誰もが子供を世話しています。

 

【狼と人間がお互いを癒す】

このように感情豊かな狼によって、戦場という過酷な環境によって、「PTSD(心的外傷後ストレス障害)を負った兵士たちが癒されている」ことで話題となりました。これは、アメリカの「ロックウッド動物救助センター」で行われています。名前からもわかるように、こちらで兵士たちを癒すのは、何らかの理由で群れからはぐれてしまったり、狩りが出来なくなったりしてしまい、救助されてきた狼です。すなわち「狼も傷ついている」わけです。そんな心に傷を負った存在同士が、「人間と動物という垣根を越えて接する」ことで、自然というより大きな存在の一部であることを実感し、「お互いを癒すことで傷を癒していく」ということで、多くの実績をあげています。

残念ながら、日本で神として信仰されてきた固有種である「ニホンオオカミ」は、すでに絶滅してしまいましたが、多くの農家を悩ませている鹿や猪の害を解消するためには、日本でもイエローストーン国立公園のような対策を取ることが必要になるのかもしれません。高齢化してきている猟師のなり手を募集するよりも、そちらの方がよりエコでスピリチュアルであり、なおかつ自然の理に叶った方法ではないでしょうか?

Wolf to protect the natural harmony.
Wolf is God in Japan.

 

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