東京新宿区 高田馬場にある、「占いカフェ 神々の森神社カフェ」からの、タロットカードについての発信です。
愚者。愚か者。
タロットカードについて少しでも振れたことがあれば、このカードにいてはご存知なのではないかと思います。
番号がない特殊なカード。現在では、ゼロ番として最初の位置に置かれていることが多いですが、歴史的には最後の位置に置かれたことも、最後から2番目や3番目に置かれたこともありました。
タロットカードは、15~16世紀のイタリアに突然現れた神秘のカード。
おそらく、現在一番知られている占いの一つですが、親しみやすそうな外見と裏腹に、使いこなすのは意外に難しかったりします。
その理由は色々あると思いますが、ひとつは、カードがヨーロッパで作られたものであり、ヨーロッパ文化を前提としないと絵の意味が分かりにくいということがあると思います。
今日とりあげる「愚者」も、そうした西洋文化が色濃く表れているカードです。
しかし、「愚者」という主題は、実は世界中に見られる表現であり、日本文化の中でも非常に重要なものでもあります。この角度からタロットカードをつかむことで、深い世界が見えてくるのです。
愚者のイメージ
愚者は、ヨーロッパの文化の中では、時代の変わり目に、文学・伝説。神話として必ず語られてきた主題です。
近代初期には、「痴愚神礼賛(ちぐしんらいさん)」という本が書かれました。
これは、愚かさを司る神が、素朴にキリスト教や社会の体制を批判していくという本ですが、宗教改革をうながし、近代という時代を作る、原動力になっていきました。
時代はもう少し前になりますが、ボッカチオの「デカメロン」物語集の名前を聞いたことがありますか。
高校で世界史を取った方は必ず題名は知っていると思います。
この中にも、愚者の主題は様々に見られます。
典型として、オネスティという愚か者が、自由に暴れたりしながら世界や常識を変える話があります。
より古くはキリスト教の教祖のイエスが、愚者の原型かもしれません。
「彼は、罪人のように殺された。律法なるものの全てを否定し、愚かなものとして扱われた。
しかし、彼は地上へ降った神であり、愛の福音であった」
聖書の詩編にある言葉です。ユダヤ教の律法にも、ローマ帝国の法律にも従わず、愚か者のように振る舞い、自由に愛を説いたイエスは、罪人であり愚者として死刑になりました。
しかし、そうしたイエス・キリストの誕生で、崩壊しきった古代ローマ社会は、中世ヨーロッパへと変革を遂げました。
このように、ヨーロッパ文化の中では、愚か者は、愚かであるがゆえに、「とらわれなく物事を見て、変えてゆけるもの、完全なる自由人」という意味合いを持ち、愚かであるからこそ世界全体を変えるのです。