英字新聞ジャパンタイムズの外国人記者が出羽三山で山伏体験~Japan’s ancient tradition of mountain ascetics(1)

地元住民でさえも山伏文化は異次元の世界。それを外国人が体験します。物語の舞台は出羽三山です。Yamabushi: Japan’s ancient tradition of mountain ascetics opens to the public A foreign reporter reports the ascetic training (Yamabushi) experience.

トリニティでも大人気の講師、リュウ博士のインタビュー&体験記「成功している人はなぜ神社に行くのか」を読んだ後、ふと気になってネットで山伏(修験の修行者)をキーワードに検索していたら、ジャパンタイムズ記者による修験体験の記事を見つけました。

白装束の意味。そこかしこに感じる日本文化への畏敬の念。

外国人の新鮮な目から見た山伏体験レポートです。
日本人にもなじみの薄い山伏文化。山伏と一緒にお山へ入らせて頂くような、不思議な世界をのぞく感覚で楽しんでみてください。
2回シリーズでお伝えします。

 

地元住民でさえ、私たちの格好に驚いているようだ。

「寒くないですか?」ウィンドブレーカーを着たハイカーに訊かれる。
白装束の帯をきつく締め、脚絆が風に吹かれてほどけないよう、袴の下にしまい込む。
白装束は神聖な衣装だが、下に何重にも着込んでいるので意外と暖かい。

ほかのハイカーは私の頭襟(ときん=山伏がかぶる帽子)を指さし、「似合っているわ。かわいい」と声をかけてくれた。
私は「ありがとうございます」と答えながら、私以外にもこの衣装一式の意味を知らない人がいることにほっとしていた。

私はこの衣装の珍しさと驚くべき心地よさに酔いしれていた。
しかし、それは、この衣装が死装束を模してデザインされたもので、それだけに厳粛な意味をもつものだと知るまでの話だった。

白装束を身に着けることで、修行者たちは象徴的に世俗の雑事と縁を切り、3つの神聖な山(出羽三山)を駆け抜ける準備を整える。
羽黒山は現在、月山は過去、湯殿山は未来を意味していて、これらの三山を縦走することで霊的に生まれ変わることができる。

修験道とは、山岳信仰、仏教、神道、道教の要素が交じり合った苦行を伴う宗教で、その実践者を山伏(修験道)と呼ぶ。
山伏は悟りを求めて長期にわたって山にこもり、滝行や火渡り(熱した炭を敷き詰めた道の上を裸足で歩き抜ける行)などの厳しい訓練を積む。

山形県鶴岡市にある出羽三山は8~9世紀に修験道が始まって以来、山伏にとって重要な拠点だった。
中世から戦国時代にかけては廃れていたが、江戸時代(1603~1866年)に再び盛り返した。
現在に至るまで、健康な山伏は出羽三山を巡礼することが通過儀礼となっている。

山伏修行は長らく非公開だったが、外部にも開かれるようになってからは信者以外の多くの人が参加するようになった。
参加者には、現代社会のストレスで疲れ果て、休息を求めてくる会社員もいれば、観光客もいる。
あるいは、あまり知られていない日本文化に触れたいと思っている外国人もいる。
地元住民も出羽三山にいろんな人を呼び込もうと熱心に活動している。

出典元:http://hagurokanko.jp/miru/hagurosan/zuishinmon.html

 

巡礼の旅は、三山の中で最も上りやすい山、羽黒山の麓にある随神門から始まる。

石段を下りて深い森に入っていく。
細かく複雑に彫刻された木造のお社があちこちにあり、それぞれがさまざまな神様を祀っている。
神社好きの修行者たちは間もなく思い思いに散策し始めた。
ところがそこへ先達(山伏の指導者)から朱色の橋の横に集まるよう、ほら貝による合図が出た。
その橋のところには滝が見え、そばに小さな社があった。
そのお社は驚くほど周りの森と溶け合っていた。

しばらく進むと東北地方で最も古い仏塔(五重塔)に到着する。
これは日本で最も美しい仏塔の1つと言われている。
高さは30メートル。上から下まで1本の柱が貫通しているが、5つの部分はそれぞれ完全に独立している。
ガイドによると、東京のスカイツリーはこの五重塔の構造を参考にして建てられたという。

 

この五重塔に元気をもらい、再び頂上に向けて2446段ある石段を歩き始める。

周囲にハイカーはいない。
鳥のさえずりが耳に響き、580本の杉並木を吹き抜ける風を感じる。
何とも清々しい時間。

木々の下を歩いていると、巡礼の歴史を感じざるを得ない。
そびえ立つ杉の大木はいずれも樹齢300~500年だ。また、鋭い感覚を持つ巡礼者のために、石段には33個の手彫り彫刻がある。
これらを彫るのには13年かかったと言われている。
中には盃のような形のものもあった。

羽黒山の杉並木は非常に美しく、国指定の特別天然記念物となっている。
ミシュラン・グリーンガイドの三つ星も取得している。
注)ミシュラン・グリーンガイドとは、豊かな自然や多彩な文化遺産など各地を独自の方法で調査し、旅行者にお勧めしたい場所を掲載したもの。
その中でも特にお勧めしたい場所を三つ星から一つ星までの星の数で表している。

半分ほど登ると、3代目のご主人が経営する休憩所がある。
山の中腹にあるにもかかわらず、スタッフたちは毎日ここまで食材を運ぶ。
雪で道が閉ざされる冬以外は開店し、緑茶や甘味、そして絶景を提供している。

出典元: http://www.mokkedano.net/course/17

石段を登りきると出羽神社(三神合祭殿)があり、私たちはここで神道方式の祈祷を受けた。
紙でできた御幣を振ってもらい、お経を唱え、鈴を鳴らす。
その後、麓の宿坊町、手向(とうげ)に下りた。
手向にはたくさんの宿坊があり、いずれのお宅の入り口にも注連縄がかかっている。
彼らは何百年も前から巡礼者に宿と食事(精進料理=仏教の戒律に基づき動物性の食材を使わない料理)だけでなく、ときには山の案内サービスまで提供してきた

 

(続く)

 

出典元:https://www.japantimes.co.jp/life/2017/10/13/travel/yamabushi-japans-ancient-tradition-mountain-ascetics-opens-public/#.We2B4Wi0OUk