KUSAKA SAVIOUR 新訳~日本神話~ PART2 東京オリンピック

この物語は、「あの世」といわれる不思議世界が、ふしぎなことではなくて 誰でも一般的に行き来することができ だれでもコンビニに行くように遊びに行けるようになった 、 ほんとうに最近の未来のお話。

 

うつしよのすべてはゆめ

淀姫神社の祭神をのちに図書館で調べるようになったのだけれど

どうやらそれはお祓いの神だった時期があるそうだ。

わたしが佐賀県の図書館であの神社のことを調べるようになったのは

照彦が生まれる前の時

あの女の子は私に何を言おうとしたのだろう?

あの土地の鬼退治伝説は、何か関係があったのだろうか?

2012年のある日 18歳の時失踪した照彦は20歳になったとき奇跡の生還を遂げた。

一時は警察が介入して、死亡したものと思われていたが、(鳩を見つけた者ども)という人物らからの連絡により、テルヒコの所在が判明

千里は照彦と再会することができたのであった。

「テルヒコが還ってくるならば、私はもう何があってもいい、何でもする!」

千里は提示される条件などどうでもよく、テルヒコさえ帰ってくればそれでよかった。

しかし、そのころから黒服の男たちに付け狙われるようになった。そういうこともあって、20歳のある日から何かを決したように

テルヒコはテントで全国各地を移動する逃亡生活を 余儀なくされる。

照彦はどうにかがんばって仕事を見つけ、雇われながらフリーライターの仕事をするようになっていた。

それ以外長期間の山籠もりに近隣住民に農業の仕事を手伝わせてもらうなどし、サバイバルそのものの生活を送ったのだった。

「照彦です、何とか生きています」そんな言葉から始まった彼のブログは多くのアクセスを記録する。

そんなこんなでテルヒコは各地を転々としていたが、ある日にまた、再び姿を消す。18歳の最初の失踪の時

照彦は千里にあるはなしをした。「現実としか思えないような夢って、母さんは見たことある?」

「みたことはあるけど……それとこれと どういう関係があるの?」

「どうやら、僕はこの世ではないどこかで、見知らぬ誰かに毎日毎日呼びかけられているようなんだ」

「……」

千里は息子が気がおかしくなったとは思えなかった。なぜならば、千里は照彦と同じ夢を何度も見ているからである。

千里は同じ夢を見てはいたが、息子の夢を肯定したら次こそは本当に黒服の男たちに連れていかれそうで

失踪してしまいそうで

恐ろしかった。そのため直接は肯定したことはない。

照彦は「そうだよね、夢だよね」と納得するのであった。

だが、それが決して夢ではないと言うことを、千里はそのたび実感してゆく。

本当に照彦は消えた……東京オリンピックの日であった。

……テルヒコのようすがなんだかおかしいと思うようになったのは最近のこと。

いまの時代はインターネットが発達していて便利ね。

わたしももうおばさん。

テルヒコにももういい年なんだからしっかりしなさいと口癖のように

ぼやくようになる。でも、そういうことを言えるってことは

私たち平和な証拠

最近照彦がまた不思議な夢ばかりを見るようになったと言うから

心配していたのだけど 数年前見た夢の続きを

毎日見るようになった。

それはおろか、一人で夜になると家から抜け出すようになった。

それが心配で、連絡はするように言っているのだけど

ある日、照彦は私にこういうのだった。

「母さん、おれ、ちょっと九州を一周旅してくる。自転車で」

はあ⁉︎ どういう体力があるんだ、というかどれだけ若いんだお前は

と言ってやりたくなったが

資金は彼が出すと言うので気を付けるように言って送り出した

なにやら佐賀県の私の子供の時育った自宅付近の

淀姫さんのことが強烈に気になるのだと言う。なぜ息子が……という疑問はあったが、疑問よりも

わたしとしても行ってこいと内心思っていることに気づく

これも旅だから無事帰ってくるわ……

と自分に言い聞かせ、自分はそこに行くのをためらってしまった。

そうすると、彼の赤いリュックに水筒と自家製のミルクティーを

詰め込んで、照彦はひとりで旅に出た

彼、近所のコンビニでミルクティーばかり買って、まとめ買いしすぎるので「紅茶男」というあだ名で呼ばれているとかぼっさぼさしたあたまで言っていた。電車男じゃないのだから……

スーパーのほうが安いとかぶつぶつ言っていたためだろ う

糖尿病になるわよ……というものの、紅茶好きは止められないようである。

そしてついに、照彦はその神社の前にやってきた。

そのとき「わが玉よ、ようきたな……」という声が空に響いた。

照彦が振り返った時、そこには誰もいなかった。

平成の東京オリンピックの日 天の岩戸開きをテーマにしたパレードが知事のプランで採用され、行われた。

その岩戸から着ぐるみを着た選手たちが出てこようとした瞬間

世界を真っ黒い雲が襲ったかに見えた。

岩戸開きと同時に、五輪の会場の選手団をはじめとする多くの人々が一瞬にして姿をどこかへ隠してしまった

まるでイリュージョンだか、神隠しにでもあったかのように……まるで、誰かの意志のように。

日下部照彦はその光景を見て街頭のテレビでこうつぶやく

「これが………………これが、“あの日の夢の正体”だったのか!」

時間は照彦が1 3歳だったころにさかのぼる。なぜならば、彼の悪夢はこの時から始まっていたからである。

照彦は風と共にどこかへと消える。

母と子が織りなす哀しみの物語がいま始まった。

 

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