「すまぬ。おまえちい子だったな。儂はお前たちに名前の一つもちゃんと
しっかり名乗っていなかった。もう長い間ここにはいられないのだ。
わしゃ遠いところまでこの爺やと旅をせねばならんでのう。許しておくれ。別れのあいさつに
来たのじゃ。さっきお前が家で儂を視る、いや感じることができたんじゃよ? あれは、幽霊でもお化けでもない。
信じてもらえんじゃよが 儂がお前を呼んだのよ。おまえがあと何年もたって大人になって
子供を産む日が必ず来る。そしたらそのとき、このことをお前の息子に見せてやってくれ。」
というと少女は背中を見せ、着物を脱いで半分裸となる「!」
背中には十字架にできたあざがあった。
それもとんでもなく大きかった。
背中には北斗七星のようなほくろ? がついていた……ように覚えている
「ありがとう千里。わたしはあなたたちから言わせるところの”鬼のうまれかわり”なの。
といったほうがいいかもしれないわね。正しい言葉ではうまく教えられないんだけれど、いまはそういっておくわ。
わたしの宝物によろしくね。絶対に生き残って!」
そう偉そうな女の子はきゅうに語調が変わり
大人びた話し方になった
「ど、どういうこっちゃ⁉︎ きゃっ!」
わたしのへそに激痛が走り、めの前に大きな亀さんが
迫ってくるイメージが見えたんだ。
「あんたにわたしのたからものをあげる。」
亀がいきなり私の目の前で
「わしゃおまえのこと友達と思っているよ。でも
もしあんたの子があんたの手で止められなかったら、
そんときゃ私の敵になってしまう。そのときは……わたしが」
と言って きた……
意味が分からない。この女の子は何を言っているんだろう。
というかこの亀の存在意義は何だろう
ギャグをかますきか?
というかさっきのおじいちゃんはだれや?
おいおいおい~! と冷静で客観的な指摘がうちの
脳内で開始されていた時
そのおじさんにそっくりうり二つの診療所の先生が
うちを起こしてくれた。
「ちいこちゃん? おい! どうしたとや! ひとりで家から
抜け出して」
私はひとり家を飛び出し、松浦側から向こうの集落まで
ひとりでただひたすら走り回って大声 で叫んでいたという
近所の人が発見し、倒れているのを見つけたという。
「どうしたんか? なんかついとるんとちゃう?」
と家族は心配したが、父の軽いげんこつと
心配していたよ~の一言で
どうにか許された。ああくわばらくわばら
しっかしどういうことだろうなあ。
わたしの子供ってなんや?
9歳奇跡の妊娠! とかいうことがあるとか……?
いやいやありえない
テレビ以上のネタとして世間がひっくり返る。
それはありえないが、あの女の子は、何者なの?
あの時はうちはいきなりのことで動転して忘れていたが
よくよく考えたら、あの子、頭に角が生えていた。
あ、あああ! ああああああああああああああああああ!
あの子、もしかして…………
「あの神社の、あの神社の、あの神社の」
あの子は……!
川上の少女
翌日、学校で
「誰や、そんなやつ知らん」
その女の子と遊んだみんなはその子のことを知らない
誰一人覚えていなかったのである。ねえみんなどうしてや?
いっしょにあそんだわ! どういうこと? うちだけ?
「ちい子、お前が嘘をつくことがないのはおいばしっとうけんのう。でもなあ、ちょっと今回ばかりは許してやるけん
なんかほかに隠そうとしとるんじゃないか? 怒らんかい先生に話してみな」
先生まで、もう!
トミちゃんなら……こういう幽霊的な事象は基本的に耐性があるはず!
基本的に 内心馬鹿にしていたそういう事柄を、今では共有しあえる唯一無二の心の友!
トミちゃんが小学生にして50キロ近くあるジャイ子のような
巨体を揺らし「ちいちゃんわかったわ! それは淀姫さんよ!」
と何かを悟ったような顔で言い切ったのだ。「よ、よどひめえ?」
「あの神社淀姫神社でしょう? 黒い髪の毛で偉そうな妖怪みたいななにか……みんな見えない人物
といったらばもう淀姫さんよ。そうわたしはおもうわよ~」
「こんど淀姫さんでお祭りがあるからちょうどいいじゃない! いっしょにいこうよ!」
え~……またあそこに行くのかあ……めんどくせえ
そう思ったが家族で行けば怖くはないはず。
「あのなあ、なんかあそこで変なこと言われたんよ
自分はあんたたちからしたら鬼とか あんたの子供はどうのこうの……って。これどうおもう?」
「どうのこうのって、そのどうのこうのが分からんとなんも言えん!」
と確かにそうだなあと思うような突っ込みをされたが、一時考え込んで
「あんたあそこの神社の神主なったら? いつかそれがわかるんじゃない?」
いやだ~あんなきもちわるいとこ。
というかそれがまだ淀姫さんか分かったことではないし
とおもっていると、
横の黒板に「現世は夢夜の夢こそまこと」
という文字がきがあった。
そのとき校舎の外に
「ちい子」
あの少女と ハット帽をかぶったおじいさんが
明らかにこちらを見て微笑みかけているのが見えた
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