KUSAKA SAVIOUR 新訳~日本神話~ PART1誕生

この物語は、「あの世」といわれる不思議世界が、ふしぎなことではなくて 誰でも一般的に行き来することができ だれでもコンビニに行くように遊びに行けるようになった 、 ほんとうに最近の未来のお話。

ちぃ子の東京オリンピック

昭和のある日、テレビがやっとうちに届いた

家にかえると、松浦川のほとりで石切屋さんが

きているとうちの母さんがつぶやく。

最近あの石切屋さんよく近くで仕事しているよなあ

そうおもいながら私は、家に帰ってテレビというものが

はじめて目の前に届いた感動に胸を高鳴らせていた。

「すっご~い! かっこいい!」

これが、テレビジョンっていうんや。

生まれて初めて見たタコさん足のような姿。

や、私の名前は千里。ちいちゃんっていわれてます。

学 校の男子にチーチーいわれるんだけど

こないだだってクラスの辰也が友達のトミちゃんを

泣かすもんだから鉄拳制裁をお見舞いしてやった

あんまり男の子のようにふるまうとお嫁にいけないと母に言われている。

そういう型にはまった自己紹介は置いといて

そういえば日本の東京オリンピックってこれがはじめて

なんかな……とおもいつつ画面にめをむける。そういうこまかいことは子供にはよくわかりません。

明日学校へ行ったら先生に、テレビが来たことちょっと

自慢して、どんなだったか話そうかな

それはそうと私が住んでいる佐賀県 の金石原という土地の近くに

かわったところがあります。

近所の松浦川の真横に大きな古びた神社があるけど

そこに毎日変わった女の子を見るようになったの。

(腰まで手を伸ばして)こ~んなに髪の毛が真っ黒で

すんごい美少女で、おまえは神かっていうような

えらそーな態度の女の子なんだけど、近所の

ガキども(ま、私もガキだけど)と遊びたがってる。

「わしゃ○○じゃ~! ガハハ!」と姫将軍のようなかんじではなしている。

私は何度かしか遊んだことがない子だけど、すっごく可愛い女の子。

漫画から抜け出てきたよ うな、浮世離れした可愛さだった。

黒い髪の毛は昆布のよう。いや、墨汁で染め上げられたかのように黒い。すっごくしっとりとしている

着物は青い染物に龍とか蝶ちょの刺繍をしている。あんなものどこで買ったの?と問いただしたいくらいに

地元の子供たちとともにいる時にはなんだか不釣り合いなのである

だけれど、それはみんな疑問に思わず友達として仲間に入れてあげていた。

だって一人ぼっちでかわいそうだったもの。

こないだも夜遅くなるまで遊んでいた。

こないだばあちゃんにそのこと話したら

「気持ち悪かこといわんで! こないだ連れ帰った時 も

神社の近くに女の子なんておらんかったやろ!

あんまりなんでも神社とかいかんほうがいいよ」

なんていうのだからこまったものである。

そんなに怖い子ではなかったけどな~。

うちのばあちゃんそういうの基本的に信じんくせに

何を具体的に恐れているんやろ。まいいか

それよりテレビテレビ

テレビを見ていると新体操選手に世界各国のスポーツ選手の姿が見えた

五輪の輪が見えたところで、だれか見たことのあるような影がうつる

「ちいこ、すまぬ……」

そう、脳みその中に”あの女の子”が着物を 着て

ガーン! と脳みそに声を訴えかけてくる???!!!

振り返ったが、誰かがいるわけではない。

家から冷や汗で出て、家の半径10メートルを

ぐるぐるぐるぐるまわってみる……

うち、あたまでもうったんやろうか。

それともなんやろか。おじいちゃんのように

河童と出会ったとか?

あ、いや違う違う、じいちゃんは子供の時河童に

遭遇しようと数時間ねばって、そんなことは基本的にないまま

虫に刺されまくって無事帰還したんだわ。佐賀県には町の中に河童のミイラがあって

酒造の兄ちゃんが家 宝になると言っていた。

とうとうおかしくなったと私は思っていたが、私もそろそろ

お兄ちゃんを批判できない立場になるやも知れない

うちが最初の未知の何かとの遭遇?

そんなことが文章の半分ほどかすめたとき腕を引っ張られた

「わ~!」何とも言えない力で引っ張られてわたしはそれとも半ば自分の心の導きなのか

よくわからない引力にひかれて気が付いたら神社の前にいた。

目の前には灯りがついて周囲は真っ暗になっていた。

「? なにこれ? うちさっきまでテレビを……」

そこには厳しそうなおじさんが一人、中折れ帽子をかぶって立っている。

「お嬢ちゃんすまんね。すぐ戻っていいから、ちょっと

うちの娘というか、なんというか、その……うちのもの? が

嬢ちゃんに用があると言っているもんでな」

「知らない人に話しかけれらてもついていくなって

母さんが言ってましたたたたたたた」とひきつった顔で言ってしまった

そしたらおじいさんの横に「すまぬの……儂がちい子を呼んだのじゃ」

とさっきの黒い髪の女の子が下駄をはいてチャラチャラ言わせてやってきた。