【人間が魔界に落ちると天狗になる?】
とても強い力をもっていた天狗ですが、日本に渡ってきたことで、その性格が変わっていきます。
元々、中国の天狗も隕石として「災いと破壊をもたらす存在」だったわけですが、悪龍を退治する迦楼羅と同一視されることで、神としての力を得ました。しかしながら、縁起の悪いという属性は消せなかったようで、天狗とは徳の高い僧侶などが、なんらかの理由で堕落した結果の姿とされたのです。
このことから、天狗の名前に「~坊」というようなものが多い理由もわかりますし、修験者の格好をしているのも当然といえますが、中には高貴な生まれだったが故に、「大天狗として転生して、天狗総てを支配下に置いた」とされる人物も存在しています。
その人物とは「崇徳天皇」。天皇、上皇という「日本の最高権力者の地位」にありながらも、不遇の生涯を送り最後には流刑にあってしまいます。このとき、仏教に帰依して、経典の写本をつくり、朝廷に差し出したにもかかわらず拒否されたために、怒りのあまりに舌をかみ切った血で経典に呪いを記して、天狗に変わったとされているのです。
この呪いは強烈であり、現在でも崇徳天皇の怨霊を鎮めるために立てられた神社が各地に存在していますし、能や狂言、物語などのモチーフとしてもよく使われているほどです。
【実は宇宙人だった?】
このような天狗のイメージは、江戸時代頃になってまた変化がおきます。
天狗と同一視されていた修験者が、山の神を天狗と位置づけて、不吉な要素を払拭していく一方で、民間では「天狗攫い」といって、子供などが「天狗によって誘拐される」という話が登場しました。
実際に、天狗によって攫われていたという人物も存在しています。
西暦1812年に当時7歳だった「寅吉」という男の子が天狗に攫われました。といっても、無理矢理誘拐されたというわけではなく、不思議な老人に話しかけたところ、壺を通って現在の「上野から、茨城県までワープした」のだそうです。寅吉は、それからも老人につれられて、日本全国を旅して、最終的には岩間山という場所で、さまざまな術を学ぶ事になります。
「4年間にわたる修行で超能力を得た」寅吉は、江戸で話題となり、さまざまな人が話を聞きに来るようになりました。その中には、江戸時代後期の国学者であり、神道家でもあった「平田篤胤」も含まれており、彼は寅吉に心酔し、その話をもとに『仙境異聞』という大著を著しました。
これによると天狗は、どちらかというと山の神に近い存在でありながらも、さほど格が高くはないとされており、10代の子供が考えたとは思えないようなリアルな霊界の様子が事細かに紹介されています。
このことから、天狗とは現代でいうところの「宇宙人」であり、寅吉は「チャネリング的な方法」、もしくは宇宙人のテクノロジーによって旅をして、さまざまな知識や技術などを会得したのではないかという説もあるのです。
知ればしるほど、その姿がわからなくなる天狗。メジャーでありながらも、これだけの謎があるからこそ、古い時代からさまざまな物語に登場してきたのかもしれません。
Tengu with a variety of appearance.
The identity of the Tengu is alien.