草木塔~植物への感謝をあらわしたもの

日本には「供養塔」というものがあります。これは、何らかの存在に「感謝を捧げて供養するために作られたもの」であり、その対象は「動物や魚類、さらには針や包丁といった道具」にまで及びます。

【私たちを生かしてくれている存在】

私たち人間は、「自然によって生かされている」といっても過言ではありません。特に植物が存在していなければ、酸素もなく、必要な栄養素を充分に取ることもできないということもあり、まさに、「生命線ともいえる存在のひとつ」です。

そんな植物ですが、動物のように目に見えて動き回っているわけではなく、成長が見えにくい存在です。その為、その存在が重要なものであり、人間が消費しているということを意識しにくいものです。

しかし、そんな「草木への感謝を形で表した物」があります。

 

【珍しい供養塔】

それが「草木塔(そうもくとう)」と呼ばれるもの。

日本には「供養塔」というものがあります。これは、何らかの存在に「感謝を捧げて供養するために作られたもの」であり、その対象は「動物や魚類、さらには針や包丁といった道具」にまで及びます。

日本人の万物に魂が宿る、という思想のあらわれですが、身近すぎるせいなのか、意外と草木の供養塔というものはありません。

 

【草木塔の9割が山形県に存在】

現在、日本国内には「160基以上の草木塔」が確認されています。そのうち「9割が山形県に分布」しており、特に「置賜地方という地域に集中」しています。

さまざまな供養塔を作る日本人が、なぜ草木だけは、さほど重視しなかったのかは定かではありませんし、山形にだけ集中している理由もはっきりとはわかっていません。

最も古い草木塔は、「1780年に建立されたもの」だといわれています。基本的には自然石に簡単に手を加えて、そこに「草木塔」「草木供養塔」「草木供養経」「山川草木悉皆成仏」といった碑文が刻まれているという非常にシンプルなものです。

地元の人にとっては、身近なものであり、外見もシンプルだったことから、他の地域ではあまり知られていませんでした。しかし、近年になって、古くからあるエコロジーの象徴として、さまざまなPRがはじまっています。

その結果、昭和や平成の時代になってからは、山形だけでなく、他の地方でも草木塔の建立が増えてきています。

 

【さまざまな想いが込められた草木塔】

草木塔は、林業、とくに山から木材を切り出し、川を使って山奥の伐採地から里まで運搬する「木流し」という手法がつかわれた場所に建てられていたようです。

この手法は言葉で表現すると手軽なようですが、実際には、冬の間はつもった雪を利用して川の側に移動。春になって、雪解け水で増水した川の流れを利用して下流まで流します。最後にもっとも水かさが増えた10月末に里まで流すという、非常に手間のかかるものでした。

また、激流を利用したにもかかわらず、「木が流れから離れた場合は、そんな川に飛び込んで進路を変えたりもした」のだそうです。それだけ「危険だったために、草木の供養だけでなく、作業の安全を祈願していた」とも考えられています。

あまりにも身近なだけに、「その生命力と私たちに与えてくれる恩恵」を忘れがちの「草木」。そんな草木に感謝を捧げる草木塔が、もっと増えるというのは素敵なことではないでしょうか?

The monument, which represents the appreciation of the plant.
We will not forget thanks to the vegetation.