脚光を浴びつつある盆石 その起源は仙界へと旅立つ門だった

盆石というのは、まさに自分の心を表現するものですから、そこに意識を投影することで、「自分の内面世界へと旅することが可能」となるのです。

【極小で表現されたわびさびの世界】

和の風情と、その芸術性の高さから最近注目されてきている「盆石」。江戸時代には多くの流派が誕生するほど人気だったものが、現在にいたるまでに、ほとんどの「流派が失われ廃れて」しまっていました。しかしながら、その作り方がYouTubeなどで紹介されることによって、新たに脚光を浴び始めているのです。

盆石とは、黒塗りのお盆に石を設置し、そこに白砂で模様を書いていくというもの。簡単にいってしまうと、お寺の庭園などに見られる「石庭のミニ版」といえます。その風景は固定することも可能ですが、材質的にはそのままにしておくと、すぐに形が変わってしまうということもあり、どこか「ネイティブ・アメリカンによって描かれる砂絵をイメージさせてくれるもの」でもあります。

論より証拠。まずは、現代にも伝わる盆石の制作過程をご覧下さい。

いかがだったでしょうか? 何もないお盆の上に、美しい風景が産み出されていく光景はシックな色合いと相まって、まさに「わびさびの世界」であり、「日本の美意識が結晶したもの」といえるでしょう。

 

【設計図から禅の思想へ】

盆石は、石庭を作る際にその「設計図代わりに作られたのがはじまり」といわれていますが、いつしか、単なる実用品ではなく、石庭が持つ「禅の思想が色濃く反映され」、自然の風景ではなく、「自らの心の風景を描写する」という非常にスピリチュアルなものとなりました。このために、貴族や僧侶といった当時の知識階級に好まれた趣味だったのです。

本格的な石庭を作ったり、時間のかかる盆栽を育てたりするのに比べると、「盆石は比較的短時間で制作することが可能」であり、なおかつ、制作者次第でさまざまな表情を見せることから、近年になってその良さが見直されてきています。しかしながら、それはどちらかというと芸術的な面や、趣味的な面であり、盆石のルーツとなる、石を鑑賞していた時代にあった「スピリチュアルな思想とはちょっと離れている」かもしれません。

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【石は仙人の世界へと繋がっていた】

盆石やその元となる石庭は、そもそもは「仙界」をイメージして作られたものでした。中国では「仙人は時として神よりも高次元の存在」とされ、不老不死であり、なおかつ様々な奇跡を起こすことで知られています。そんな仙人達は俗世を離れて、仙界で暮らすと考えられていました。この仙界は、人が立ち入れないように山深くにあるとされ、それらの「山自体が神聖視されていた」のです。