伽座守珊瑚の開運『狼語り狐語り』第26話~狐眷族『長老』の博識の前には、後輩眷族は『ぐうの音』もでない……?~

狐眷族『長老』の話しから、後輩眷族である『甚六』、『ちゃ』、そして『グラウ』の三匹が気付かない、将門とご縁があった過去の記憶を取り戻しました。今回はさらに『長老』が後輩眷族に刺激を与えます……。

 

【 狐眷族『長老』。後輩眷族へ語る新たな歴史絵巻とは?】

「明智光秀父子=天海僧正を導いたのは安倍晴明さまなのだからねぇ。
明智家の家紋は桔梗だねぇ。

明智家を輩出した土岐氏は清和源氏が祖とされるが、桔梗紋には五芒星と同じ霊力がある。五芒星という呼び名が無かった時代、その形を『桔梗紋』の一種と呼ぶのは偶然では無い。血筋だけではなく世の守りとなる霊脈・ご神縁など、様々な縁に導かれて桔梗紋を持つ。幕末の坂本龍馬も桔梗紋だったかねぇ。

織田信長が一霊四魂の一つに日本武尊様の御霊をお持ちなのはご存知かな?
父との確執は前世の名残かねぇ。光秀は信長に見出された。からみあっているねぇ。

平安時代、逆賊の子としての誹りを安倍を名乗ることで逃れた平正国(将国)=安倍晴明は、江戸300年の安泰を築くとき、明智光秀の一霊四魂の一つとして主君を討った逆賊の汚名を纏い、織田信長が戦国大名から『祈り人』に変わるきっかけになり、自らはかつて焼き討ちした比叡山にて僧となり、信長が画策した《徳のある者が世を治める》ためにヤマトの呪詛の封印をしなおす。

 

前世の父、平将門が身も魂も粉砕せしめて成されたヤマトの呪詛の封印をね。

まだ思い出せ無いのだろうが、ここに今おる者共はヤマトの呪いを解くために遣わしめられた。日本武尊様のご意志を継ぐ者たちなのだよ。

ご祭神のために働くうちに、知らず知らずのうちにヤマトの呪詛を弱めてきた。巷の人々の心が喜びや安心で満ちれば、不安や恐怖・敵対心で発動する古代ヤマトの呪詛は開かない。結界や封印が緩んでいてもね。神様の眷族として人間の不平や不満をなくす手伝いをしておる皆は、封印の働きの一端をも担っているのだねぇ。いずれは呪詛そのものも解く日がくるやも知れん。」

長老はふぅっと朝焼けの空のように紫とオレンジの色に輝いてヨボヨボした爺さん狐の姿から七福神の寿老人みたいなニコニコした翁の姿に変わった。

高位の神格を持った眷族霊はこんな風に人型に表象化する。龍や狐ではよくある事らしいが、目の前で見るのは祠に集うほとんどの眷族たちには初めて見せられる光景だ。人の姿をした眷族にモノを言われると、獣型の眷族は何だか従順に言う事を受け入れてしまいたくなるようだ。

 

狼のグラウと稲荷狐の甚六だけは、とまどった目で翁を見ていた風体だが、その胸中を読み切ったように翁はさらにニコニコして言葉を続ける。