伽座守珊瑚の開運『狼語り狐語り』第13話~突如襲い掛かる、巨大な化狐! 霊威強靭な眷族達が立ち向かう!!

祠に集う狐達、狼眷族・狐眷族と巨大な化狐との戦い! 祠に集う皆を一口に飲み込もうとする『チーム眷族』の戦いぶりや如何に!!

 

勝負は一瞬。

でもそれはスローモーションの画像のように観衆の狐たちの目に焼きついた。
巨大な化狐の口が迫ってきた時、同時に4つの出来事が起きていた。

 

霊威の強靭な眷族 VS 巨大な化狐……我が街を守る戦い

甚六と長老をはじめとする霊威の強靭な狐は、念力のベールで観衆の狐たちや猫、そして街を守った。
グラウは銀狼の姿で宙にホバリングすると、螺旋を描く雷の帯を放ち巨大な化狐をぐるぐる巻きにして動きを封じた。
化狐が妖気の炎で抵抗すると、近くの社から秋葉権現さまが狐に乗った烏天狗のようなお姿で現れ、木の葉の扇で鎮火。
グラウが光の翼を持つ銀白色の姿になったかならなかったかで、眩い雷光が炸裂し、辺りは何事も無かったようないつもの景色に戻る。化狐は眷族の更生霊界送りになった。

良い見世物を見てしまったという観衆狐たちの眼差しがグラウに向けられるが、グラウは瞬間でも大勢の前で正体を晒す事になって不機嫌だ。

「まだいる。たくさんいる。油断できないよ。何が起きた?」
灰色狼の姿に戻ったグラウが甚六に聞く。

「何が起きたかなんて、わたしが知りたいよ。そこら中邪気だらけ、まるでパンドラの箱を開けたみたいだ。」

「これこれ、神様がお言葉を伝えておるよ。」
長老に窘められて祠に集う皆が心を澄ますと稲荷の眷族狐を統べる女神様と稲倉魂命様が降りてきていた。

神降臨_146991512

 

神様が伝えて下さる内容は瞬時に眷族たちに伝わる。

人の言葉にすると長いが内容は以下のようなものだった。

……今日の日付に替わって、祠で皆が楽しい集会に盛り上がっていた頃、未明に突然、或る古い邸宅の庭で池が埋められ、稲荷の祠が壊された。住人家族の争いで重機を扱う家業だったから自分の土地で自分の重機を動かしたもので、警察が出る幕でもなく、人間社会では事件にはならない出来事だ。

しかしその埋められた池や壊された祠からは、住処を失った竜や、長く拝まれずに神様が不在になった祠に残されて妖怪化していた『はぐれ眷族』が溢れ出て、その中でも凶暴な化け物になっていた稲荷の眷族頭だった狐が、和やかな甚六たちの狐集会の念を感じ取り、恨めしくなって襲撃した。

まだ総勢8019匹が散らばっている。速やかに『保護』し、浄化せねば憑依して人の世に悪影響を出しかねない。狐眷族は持ち場に戻り祠や民家、人をはぐれ眷族から守るように。
依り代付きの狼眷族は近隣の下谷の三峯、小野照崎神社内の三峯、御岳、浅草寺内三峯よりの援軍とともにはぐれ眷族の捕獲をするように……。

 

観衆の狐たちは、甚六の祠に降りた稲荷の神様によって居所の神社や祠に瞬間移動させてもらった。いや、させられた……。強制的に集会はお開きになってしまった。残念がる狐たちの意思を感じ取った神様は『役目だ 悪く思うな 次回の集まりには土産をもたせる』穏やかに微笑んで天へ戻られた。