何事にもとらわれない、神々の祝福を受ける「高天原(たかまのはら)の結婚式」のお噺です……

愛する二人、もしも宗教観が違ったら結婚式はどうしましょう!? こんな大きな草原で、自由に挙げるのはいかがですか……

とある物語。

ある日本人の男女が結婚することになった。

男性の父親は仏教のお寺の住職で、母親は父親のお手伝いをしていた。

男性は、日本古来の歴史、神社が大好きで、かむながらの教えを心の拠り所としていた。

女性の両親は厳格なキリスト教徒で、毎週のように教会に通っていた。

女性はイスラム諸国でのボランティア活動を通じて、イスラムのスーフィズムの教えに感銘を受けていた。

さて、祝言をどこで挙げるか。

男性の父親は、自分のお寺で2人を迎え、送り出すことを夢見て来た。

男性の母親は、2人が望む場所であれば、どこででもと思っていた。

女性の両親は、いつも通う教会で是非にと。

男性は神社で、女性はモスクで、をまず考えた……。

そして、

2人は、この空の下、この大地の上、大きな草原を探し、その上で、挙式をすることに決めた。

両家両人の家族親戚、知人友人が、その草原の上に集まった。

式の頭で、両人の発案により、まず、一同そろって、四方八方に感謝した。

天(宇宙)に感謝し、地(地球)に感謝した。

日(太陽)に感謝し、に感謝した。

内なるハートに意識を合わせ、世界の万物に感謝した。

足下は土。

草原には心地よい風が吹いていた。

式の前には、皆、近くを流れる清らかな川から汲んで来た水で手と口を洗った。

夜は満月のもと、火を起こし、キャンプファイアーのように、皆でその周りを取り囲み、手をつないで、歌い、踊った。

2人もその輪の中に。

その様子を、肉眼では見えない4人の存在が、見守っていた。

日本の女神イエス=キリストゴータマ・ブッダムハンマド(マホメット)の4人であった。

これはよい趣向ですね。

なかなかやるなあ。

静かな時間と、お祭りの時間とがあって、楽しいですね。

わしらもいっちょ踊りますか。

そこに集まっていた、様々な生きもの達、植物、龍、天使、妖精、精霊等の存在達も、皆皆、一緒になって、歌い、踊った。

草原の周りを囲む樹木達は、枝を揺らし、葉を鳴らした。

花々は香しい芳香で辺りを潤(うるお)した。

空には複数の宇宙船が集まり、夜は美しいライトアップを行った。

宇宙船の乗組員達も、参加者の各守護の方々も、一緒に歌い、踊った。

あえて言うなら、これは、高天原(たかまのはら)式、かのう(笑)。

司会者はつぶやいた。

2人は後日、両家の実家がある地元それぞれの氏神様に、お礼参りを行った。

男性の両親が働くお寺、女性の両親が通う教会、男性が大好きな神社、女性が大好きなモスク、に参拝した。

そして最後に、これから2人で住む地域の氏神様に、ご挨拶を申し上げた。

よろしくお願い申し上げます。

2人はそろって、両手を合わせ、頭を下げた。

挙式したその草原は、誰の私有地でもない空地だった。

飲食物は、色々な宗教の信者の方々がいらっしゃることを考慮し、肉はなし、参加者1人1品以上の持ちより制に。座る席は地面にござやマットを敷いて。

BGMは特になし。皆々、自然の天球秘曲(てんきゅうひきょく)に耳を傾け、音楽が必要な際には、有志が各自持参した楽器を弾いたり、たたいたり。

お金はほとんどかからなかった。

1なる根元から届いた光が、すべての参加者と、その草原を照らしていた。